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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最高に最低な──救われなかった少女 V
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ぁ」


そうして理子は、屈託の無い笑みを零した。心の奥底から洩れ出た、あの月影にも似通って爛然としている様だった。
その動作に靡いた前髪の隙間から、理子はこの話を切り出してから初めて、彩斗の姿を直視できたように思う。自分の告白を頷きながら聞いてくれていた姿だけが印象的で、その時の顔は今の今まで分からなかった──否、分かりたくなかったから。


「……ふふっ。なんで、あっくんが泣いてるの」
「別に泣いてないよ。……目が潤んだだけだもの」
「ほらぁー、泣いてるじゃん。それを泣いてるって言うの!」
「理子がそう思うなら、それでいいよ」


彩斗は指の腹で目尻のあたりを拭いながら苦笑した。よほど自分が泣くことが想定外だったのか、それとも自分自身が気が付いていなかっただけで、頑固なところがあったのかもしれない。
しかし彼が零した涙を思うと、理子は理子自身の生き様がどれほどなものだったのかを再確認させられた。あの涙には、同情の色が表層から滲み出ている。他人のことにさえ同情してくれる余裕のそこに、彼のその人格の良さを垣間見た気がした。


「あっくんって、意外と頑固なところあるよね」
「……アリアにも言われたよ。見栄張ったからこうなったんだ、って怒られちゃった。ふふっ。まぁ、そうは思わないけどね」
「でも、理子はあっくんのそういうところ、嫌いじゃないよ」


そう告げると、彩斗は何やら茫然としたような顔付きを理子に見せた。「仮に如月彩斗という人間が強情だとして、普通の人間はその強情さを嫌うものじゃないの?」そう問いかけてくる。
ほら、『仮に』ってのがもう強情じゃん。そんな言葉が喉のそこから飛び出しかかったのを、何とか堪えてみせた。


「そこは確かに分かれるかもしれないけど、でも理子は嫌いじゃないよ。だって、自分で信じたことをずぅーっと突き進めるんでしょ? それって、強情って言い方を変えればただの一途じゃない? 恋でも夢でも、物語みたいな生き方だから理子はそういうの好きだよ」


「それにさぁ、」と友誼的な調子で付け加える。


「あっくんはアリアのこと、護ってあげたいんでしょ? あの飛行機の中で言ったじゃん。アリアは大切な人と同類だから、って。そのためなら何でもできる、ってさ。それなら、その一途な想いで護ってあげなよ。《教授(プロフェシオン)》の意向と同じとか考えないでさ。如月彩斗は如月彩斗だよ。他の誰でもないもん。一途なら一途らしく生きようよ」
「……そっか。そうだね」
「ねっ? それでいいんだよ」


そう言い終えて、理子は彼に向かって笑いかけた。照れ隠しのためか、ガウンの裾を弄るなり手を組んで揉むなりしている彩斗の様が、理子にとっては新鮮に思える。恋情を自覚した年端もいかないよう
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