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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最高に最低な──救われなかった少女 V
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勝手に舞い上がってた。……でも、結局さ、強固な信頼性に勝るものなんて無かったね。また2人がさ、羨ましくなっちゃったもん」
ANA600便でのハイジャック──その騒動の記憶が、理子の脳髄に、或いは彩斗の脳髄にも同時に、映し出された。
彩斗がアリアの肩を抱き寄せて告げたあの言葉も生々しく、幻聴のように、理子の耳元で何度も何度も囁かれている。
『何が敗因だったと思う? 理子。それは、たった一つだけ。 信頼に他ならない。それこそが、武器足り得たのさ』
「司法取引に応じたのも、2人の中で理子がどれだけの価値を持ってるか──ってキチンと理解出来てたからだよ。でも、怖くなっちゃったの。司法取引が終わったら、理子は2人にとって要らない物になっちゃうんじゃないかって。それが凄く怖かった。理子は、理子自身の存在意義だけを、ずっと欲しがってたから」
その決死の想いの吐露は、締められた声帯を無理にでも震わせるような、そんな色をしていた。嗚咽ともつかない喘声が口元から漏れていくのを、自分自身で感じている。水晶体に浮かぶ湖面は、揺れる水面そのものだと──その淵から水滴が滴下して、泡沫のように弾け、霧散する音でさえ、聞こえていた。
「アルセーヌ・リュパン・4世。血統として見ればそれまでだけど、理子はお母様が名付けてくれた『理子』って名前がいちばん好きなんだよ。オルメス4世に勝っても、どうせリュパン4世として認められるだけで、どうせ理子としては認めてくれなかったから……。そう思えたから、2人には負けちゃったけど、何にも恨んでないよ。……でも、今は少しだけ休息しとく。
……ね。だからね、結局みんな、理子の独りよがりだったんだよ。リュパン4世じゃなくて、理子として存在を認めて欲しかった。贅沢言うとね、自分の存在価値を発揮する居場所も欲しかった。武偵校なんて結局は仮初めだったけど、それでも何処かに、居場所を探してたんだと思う。天然ぶってお馬鹿さんみたいにしてたのも、きっと、そういう本心の現れだったんだと思うな」
今度は自分の指の腹で、その紅涙を拭い取った。そうしてやはり、この告白は峰理子という自分自身が零した、衷心なのだと──大部分を悲哀に満ち満ちさせた、如月彩斗にもそれを露見させてしまったほどに哀れな、自分の弱さの根幹だったのだ。
あの時は彼に拭ってもらったものを、今は自分で拭い取っている。指先の温い水溜まりとその感触が、差異を教えてくれた。
「でも、もういいんだ。理子は昔より変われたし、居場所はあっくんに貰えたし、何より、理子として認めてくれたから。……ねぇ、本当はね、貴方にだけ認めてもらえれば良かったんだよ。あの日にそう思ったの。我儘は言わないから、せめて1人だけでも──って。それが如月彩斗で、本当に良かったな
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