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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最高に最低な──救われなかった少女 V
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─無邪気で可憐な一少女が、この場でお得意の演戯と虚言とを披露してくれるとの推理も、有り得なかった。
ソファーに深く腰掛けて、色白な手を華奢な膝に当てて、艶美な金髪を靡かせながら、気恥ずかしげに「えへへっ」と笑っている──その屈託のない笑顔が、どうにも本心から洩れ出たものであると、信じる以上に信じきるしか、それしか仕様がなかった。
「……ねぇ。あの日さ、あっくんに『理子のことを好きになってくれますか?』って言ったよね。で、あっくんは理子のことを強がりさんだって言った。……気付いてたと思うけど、その時は全然ね、自分が強がってるなんて思ってなかった。ただ、思ったことがポンって口から出ちゃって、だから止められなかったの」
今もそうだ。何を考えて喋っているわけでもないのに、言葉が咽喉の奥から溢れ出してくる。止めようと思っても止められない。
形になった言葉が、とめどなく吐き出されていた。角張った字もあれば、丸みを帯びている字もあった。その全てが咽喉の粘膜を引剥いで、肉叢を削いで、形骸化した屍肉と成り果てていく。例え僅かにでも抵抗しようとして、咽喉を締めようとするものならば──眼前に散らばったそれを、幻視してしまうだろう。
「でも、あっくんは分かってた。理子が自覚してなかったことまで、全部お見通しだったよね。『理子のことを好きになってくれますか?』って言った、その意味もさ。……やっぱり理子は、強がってたんだよ。ずっと、自分の居場所が欲しかったから。居場所が欲しいなら欲しいって言えばいいのに、可愛くないよね」
そう言って、理子は自嘲気味に笑みを零した。
咽喉が、痛い。口腔に溜まった屍肉を吐き出したい。──けれどそれは、実体を持っていなかった。仮初めの屍肉だった。
「結局ね、理子は自分を変えたいだけだったんだ。そうすれば、居場所がいつか出来るって、ずっと思ってた。そんなの
幻想
(
ゆめものがたり
)
かもしれないけど、ずぅーっと思ってた。理子に大した才能なんて無いってことも分かってた。あっくんとアリアが羨ましかった。理子はお母様から譲り受けた可愛さだけでチヤホヤされてるくらいで、それ以外に才能なんて、無いもん」
自分で吐き捨てた言葉が、そのまま自分のもとに帰ってくる。
心臓が、痛い。硝子片か何かが刺さったみたいで、抜こうと思っても全然抜けやしない。そもそも、指で摘めない。
心臓が、苦しい。何かに握り潰されているみたいで、解こうと藻掻いても全然治りやしない。痛い。苦しい。……悲しい。
「だから、せめて
曽祖父様
(
初代リュパン
)
を越えようって思ってた。だから、《イ・ウー》に入ったの。《武偵殺し》になって騒動を起こしたのも、完全な状態でアリアを誘き出すため。それで勝てれば、曽祖父様を越えられるって
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