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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
最高に最低な──救われなかった少女 V
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の瞳を見据える。


「この子たちは、理子に選んでもらえて幸せだと思うよ」
「そっかぁ……。えへへっ、良かったぁー」


そう言われると、自分の行動のひとつひとつが無意味だとは、理子には思えなかった。むしろ自分に対して、或いは他の何かに対してすらにも意味を与えている──と解釈する方が自然だった。
気恥ずかしげに背もたれに深く寄りかかりながら、膝に手を当てて、やり場のない脚をブラブラと浮かせている。緩んでいる口元は、敢えて隠すことはしなかった。


「ところでさ、あっくん。ちょっと話があるんだけど」


いつもの磊落な調子で、理子は話題を振る。
しかし彩斗には、何故だかそれが虚勢に見えて仕様がなかった。むしろ、これが本命でここに赴いたとも見て取れるような、妙な緊迫感すらを裡面に孕んでいる。
ともかくは「うん、どうしたの?」と優しく先を促した。


「ほら、その……。あの日(・・・)のこと……」


そこまで言い終えて、自分にしては少し歯切れが悪かったなぁ、と理子は後悔する。それが端々に、気疎さと羞恥とが入り混じる、出来れば思い出したくない記憶だったからだろうか。
見舞いという建前の裡面にある本命には、そんな意図は無いのに、その記憶だけが脳裏に過ぎって離れなくなってしまった。

言葉を続けようとすると、咽喉が締まってしまう。それでも構わなかった。ただ、この言葉を如月彩斗に伝えるまでは、ここに来た意味が無い。あっくんに想いを伝えきるまでは、何が何でも帰らない。そんな意地だけが、理子を突き動かしていた。いつもの磊落で饒舌な声は、そこには見えなかった。
彩斗がどんな顔をしているのか、自分がどんな顔をしているのかも、今の理子に考える余裕など無かった。ただ、自らの内に秘めていた想いの吐露を続けることだけに躍起になっていて、その他のことはどうでもよかったのかもしれない。


「……本当はね、あっくんに伝えたいことがあって来たんだ。理子の居場所を、作ってくれて、ありがとう──って。そうじゃなかったらきっと、理子の本当の居場所って、無かったと思う」


伝えた言葉は、不格好なまでに途切れ途切れだった。継ぎ接ぎの録音テープみたいな不出来さだった。それでも理子は構わない。
彩斗がどう思おうとも、まずは自らの想いを伝えることが出来たのだ。その事実が、充足感になって胸中を満たしていく。途端に、抱いていた気疎さと羞恥が少しだけ失せたような気がした。


「あっくんの言った『くちをしの花』って、きっと理子も、そうだったんだよね。でも、あっくんが拾い上げて生かしてくれた。……おかげで理子、今がね、すっごく幸せなんだぁー」


それが妄言だとは、彩斗には到底思えなかった。向かいに座っている自分の友人─
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