暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン〜性別不詳の槍術士〜
3.月夜の晩に射す光
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質問されても分からないと思う」

 俺は苦笑いをしながら彼女に告げた。

 多分落胆するだろう。彼女にとってはやっと見つけた蜘蛛の糸。それが目の前でいきなり千切れたのだから。

 しかし予想に反して、彼女が浮かべたのは落胆ではなく驚愕。大きく見開いた目で俺を見つめていた。

「で、でも。救助がくるかもしれないですし。待っていたほうが安全ですよ?」

「それは、そうなんだけどね……」

 実際、ここで救援を待っていたほうが安全だ。例え来なくとも、誰かが攻略するのを待ち、安全になった場所で必要最低限のコルだけを集めればそこまでの危険を冒さずにクリアまで生き延びることができる。

 ただ、それは俺にはできない。俺自身が許さない。

「ただ、それを待ってる間にも犠牲は出る。人一人が動いた程度で変わるものじゃなくても、動かないといけない。動かなくちゃ、いけないんだ」

 これは、自戒。目の前の彼女にではなく、自分に言い聞かせるようにつぶやいた言葉。世界に負けないように、潰れないために何度も何度も言い聞かせ続けた言葉だ。目の前の彼女には、奇異の目で見られるかもしれないが。

「……私には、真似できません」

 今度は俺が戸惑う番だった。現実世界で同じことを聞いた人たちは、俺に対して哀れみや嘲りを返した。それが普通の判断で、それが普通の反応だと信じて疑わなかった。

 だからこそ彼女のような賞賛の言葉は、自らを卑下するような返答への返しを俺は知らない。どんな言葉をかければよいのか分からない。俺が内心で慌てている間にも、彼女の瞳は暗いものへと変わっていく。ただ、この光景がとても見知った懐かしいものであったから、今でも頭に残る風景であったからだろうか。

「あ……」

「大丈夫。きっと上手くいく。皆が笑って帰れる日がきっと来るから、それまで待っていて欲しいな」

 気がつけば、彼女の頭を優しく撫でていた。

 思い出されるのは、はるか昔の記憶。怖いことがあった時、つらい事があった時にかけられた言葉、頭に伝うぬくもりに救われた記憶。

 彼女の頭を撫でながら、はるか過去に思いをはせる。

「……っ」

 一瞬驚いた顔の彼女は、まっすぐに俺を見つめたまま、一筋の線を頬に描き出した。

「あ、あれ……?おかしいな」

 とめどなく溢れるものは彼女の意思とは無関係に地面を濡らす。困惑しながらも何度も顔を拭えど、その涙は止まらない。

「今は、この瞬間だけは、悲しんでもいいんだよ。この世界では、感情は隠せないらしいから」

 脳から送られる信号を包み隠さずに反映し手しまうからこそ起こる弊害。多少オーバーな演出ではあるが、今回ばかりは感謝する。

 だってそうだろう?今まで不安と戦ってきた少女
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