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戦国異伝供書
第百二十話 三州奪還その十二

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「しかしじゃ」
「それでもですな」
「竜造寺家に向かわれていて」
「こちらに向かうとなりますと」
「難しいですな」
「そして大友殿はな」
 大友宗麟、大友家の主である彼はというと。
「確かに傑物ではあられるが」
「近頃耶蘇教に耽溺されて」
「それで、ですな」
「耶蘇教の教えに従うあまり」
「神社仏閣を壊していますな」
「その様なことをしてはな」
 義久は鋭い目で述べた。
「すぐに人心が離れるわ」
「全くです」
「その様なことをしては」
「家臣や民がどう思うか」
「神仏を敬うものとしては」
「そうじゃ、だからな」
 それでというのだ。
「今大友殿からは人心が離れ」
「そしてですな」
「家の中は動揺していますな」
「それもかなり」
「そうなっておる、また大友殿ご自身は耶蘇教ばかりになられ」 
 このことについてさらに話した。
「政も戦もおろそかになられておる」
「今あの家が九州で最も大きいですが」
「それが大きく揺れている」
「そうした状況ですな」
「紛れもなく」
「そこが狙い目か、そして龍造寺家は」
 この家はというと。
「その大友家に優位であるが」
「龍造寺殿があまりにも酷薄で」
「やはり人心を失っていますな」
「大友殿と同じく」
「そうなっていますな」
「そして龍造寺殿は血気に逸られる御仁とのこと」
 今度は龍造寺家の主である隆信の話をした。
「戦の場でも総大将であられてもな」
「やたら前に出られるそうですな」
「肥満のあまり満足に馬に乗れぬとのことですが」
「それで輿に乗っておられる様ですが」
「そうした方ですな」
「そこが弱みか、総大将はそうそう前に出るものではない」
 義久は強い声で言った。
「ましてや輿ではな」
「尚更ですな」
「満足に動けぬので」
「それはよくはないですな」
「そうした御仁であられることは覚えておく」
 是非にというのだった。
「わしはな」
「そのうえで龍造寺家も見ていきますか」
「そしてですか」
「そのうえで、ですな」
「若し何かあれば」
「衝くとしよう、両家のことはわかった」
 大友家と龍造寺家のことはというのだ。
「よくな、そして肥後であるが」
「様子見ですな」
「我等のことを」
「果たしてどうなるか」
「そうした家が多いですな」
「今からつこうという家もあるが」 
 その家はというと。
「迎えるとしよう」
「当家にですな」
「そうされますな」
「そうした家は」
「そうしていかれますな」
「来る者を拒む道理もなければ」 
 そしてというのだ。
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