暁 〜小説投稿サイト〜
戦国異伝供書
第百二十話 三州奪還その三

[8]前話 [2]次話
「薩摩隼人の攻め方じゃ」
「ですな、駆けつつ鉄砲も放ちます」
「これは織田家とは違います」
「あの家はそうしては使いませぬ」
「いざとなれば鉄砲隊が座り込んでな」
 そのうえでというのだ。
「後詰になり鉄砲を撃つ」
「自分は死ぬが他の者は逃げられる」
「そうしても使いまするな」
「死兵となっても」
「薩摩隼人は死ぬのを恐れぬ」
 戦でそうなることをだ、それもまた薩摩隼人の強さの理由の一つだ。そうした命懸けの肝試しもよく行う程だ。
「だからそうしたこともする、では鉄砲もな」
「この度も多く持って行きましょう」
「そして前に駆けつつ放ち」
「切り込むこともですな」
「する、では用意が整い次第出陣じゃ」
 義久は最後にこう言ってだった。
 弟達だけでなく自身も出陣の用意をした、それが整い明日出陣となった日に彼は弟達を集め酒を飲んだ。
 酒は焼酎だ、それを飲みつつ言うのだった。
「肝はよいのう」
「豚の肝もですな」
 義弘は焼いたそれを食いつつ応えた。
「またよしですな」
「うむ、他の国では獣は食わずな」
「豚もですな」
「それで肝はな」
 それはというのだ。
「魚のそれも食わぬという」
「そうですな、しかし当家は」
「こうしてじゃ」
「豚の肝を食い」
「獣の肝もな」
 これもというのだ。
「食う」
「この様にして」
「この美味さを知らぬとはな」
「勿体ないことですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「こんなに美味いのにな」
「ですな、では我等は」
「今はこうして食おうぞ」
 豚の肝をというのだ。
「肴にしてな」
「肝はよいものです」
 歳久もその肝を食いつつ言う。
「ただ美味いだけでなく」
「滋養もな」
「ありますので」
 だからだというのだ。
「食うことはよいことです」
「左様じゃな」
「毒があると言う者が他の国にはおるそうですが」
「それは誤りじゃ」
「ありませぬ」
 毒はというのだ。
「肝には」
「迷信であるな」
「迷信は信じるものではありませぬ」
「まずはことを確かめてな」
「嘘か真か知ることです」
「それが大事であるな」
「鉄砲も何かと言われていましたが」
 本朝に入った時はというのだ。
「しかし」
「それでもであるな」
「使えばです」
「あれだけ強い武器もない」
「そうは」
「弾を込めるのに時間がかかりまた雨では使えぬとです」
 家久はその鉄砲について具体的に述べた。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ