第三章 リベン珠
第10話 イサミ・クロガネと秘密の通路:前編
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て開くようになっている仕組みという事ですね」
そして、勇美は当然この光景を見た瞬間に臆してしまっていた。
「何かデジャブが……」
以前似たような状況で、これまた似たような心境になっていたなと勇美は自嘲してしまう。
そんな勇美を前にして鈴仙は言う。
「勇美さん、やっぱり怖いですよね。なのでまずは私から先に入りましょうか?」
「いえ、それもデジャブなので遠慮しておきます」
やんわりと勇美は鈴仙の申し出を、そのような理由で断っておいたのだった。
だが、断った理由は他にもあったのだ。それを勇美は口にしていく。
「鈴仙さん、私はあなたと一緒に入りたいと思うんですよ」
一緒になって共に行動する。それが仲間の醍醐味だと勇美は付け加えた。
「勇美さん……」
その言葉に鈴仙は、そこはかとなく胸の内が温かくなる心持ちとなるのだった。そういう『仲間』と呼べるものが今までの自分には不足していたのだと実感するのだった。
なので、今まで足りなかったのなら、今から足していけばいいのだと思い、鈴仙は心機一転するのだった。
「それじゃあ勇美さん、『一緒に』行きましょうか」
「そうこなくっちゃ、ですね」
ここに二人の思いは一つになり、未知の領域へと足を運んでいくのだった。
◇ ◇ ◇
やはり、異空間の入り口に体を預けるという感覚は、何度味わっても脳の理解が追い付かないと痛感する勇美であった。
今回も絵の具を子供が思い思いのままにぶちまけたような奇妙奇天烈な入り口に身を通す際は水の中に入っているようでいて、その際の抵抗がないという不可思議極まりないものなのだった。
そんな言い様もない気持ちに苛まれながらも、勇美は鈴仙と共に遂に未知の世界への扉を潜ったのだ。そして……。
「うわあ……」
勇美は驚嘆の声をあげる。寧ろそうするしか今の光景に相応しいリアクションを思いつかなかったのだった。
彼女がそうなるのも無理はないだろう。それだけ二人が今いる空間は常軌を逸していたのだから。
まず、彼女達が今立っている場所は白いワイヤーフレームで型どり、そこに見えないガラスをはめ込んだかのように確かに足場と壁と天井が存在するのだ。
しかも、それは極めて頑丈なようであった。いくら強固な衝撃を加えても決して破壊されないだろう、そう今この場所に立っている勇美には伝わってくる。
極め付きはその見えない床の下には真っ黒な空間に散りばめられた無数の星々、更には青い水の星──地球までその目で見る事が出来るのだった。
そんな中でここには確かに酸素は存在するのだ。それ故に否が応にもここが異空間だと認識するしか選択肢はなかったのだった。
「凄い所ですね鈴仙さん……」
「そうね。この場所を地上の人間に見せた上でそれで驚くなという方が無理が
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