第三章 リベン珠
第10話 イサミ・クロガネと秘密の通路:前編
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であった。
そんな未遂に終わった事件もあったものの、二人は洞穴の行き止まりまで辿り着いていたのである。
「あれ、鈴仙さん? 行き止まりですよ?」
そう訝る勇美の反応は当然というものだろう。ここまで順調に進めて来た旅がここで打ち止めになる等、目も当てられないだろう。
だが、心配には及ばなかったようだ。ここにきて鈴仙はにっこりと微笑むと、勇美に対して諭すような口調で言う。
「勇美さん、大丈夫ですよ。目的の場所はここで合っていますから」
「鈴仙さん?」
「まあ見ていて下さい」
勇美に聞かれた鈴仙は、洞穴の行き止まりのその前におもむろに立った。
それに続けて彼女は自前の長い耳に力を入れていった。それによりピクピクと動く耳が愛らしい。
「鈴仙さん、何かそれ可愛いですね♪」
「勇美さん、今集中している所だから邪魔しないで下さい」
「……ごめんなさい」
コミカルな動作に反比例するかのような鈴仙の態度に、勇美は素直に謝っておいた。
そして、目の引く光景は鈴仙のその『耳芸』だけではなかったのだった。
何やら岩の引き摺られるような音がし始めていたのだ。そして、それは当然空耳ではなかった。
「!」
勇美はその現象に驚愕してしまった。無理もないだろう、目の前の岩が、まるで引き戸のように横に動いていたのだから。
そう、先程から発生していた岩を引き摺るような音は、正に岩が動く音だったという訳である。
一体これは何事かと勇美は鈴仙に聞こうと思うも、すぐにその考えを取り止めた。何故なら鈴仙の集中している様がこれまでになく真剣で、彼女が意識をいかにかき集めているかが否がおうでも伝わってきたからだ。
この事態は何事かと勇美は気になるものの、それは事が終わるまで待つべきだと腹を括るのだった。
そう思う勇美であったが、彼女は更に驚く事となる。みるみる内に開いていった岩の中は、まるで様々な絵の具をごちゃ混ぜにしたかのような不気味な空間が広がっていたからだ。
──これは八雲紫のスキマ空間に似ているだろうか。だが、それとも違う得体の知れなさをそこから感じられる。
そして、遂に岩は完全に開いていたのだ。それを見計らって、ここぞとばかりに勇美は鈴仙に聞く。
「一体これはどういう事ですか?」
その勇美の当然の疑問に、鈴仙は簡潔に説明していく。
「これこそが『秘密の通路』の入り口です。そして、本来私達玉兎だけが知る空間という事ですよ」
「これがそうですか……」
当然勇美はその事に感心せざるを得ない。彼女が幻想郷で過ごして来た中でも、このような大それた超常現象は中々お目にかかれるものではないからだ。
そんな中鈴仙は続ける。
「普段は先ほどのように隠れていましたが、今のように私達玉兎の耳からテレパシーを送る事で扉が作動し
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