第三章 リベン珠
第10話 イサミ・クロガネと秘密の通路:前編
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山にある場所であるから、その事には拍車が掛かるというものである。
つまり、当然その事は玉兎達にとってうってつけで好都合というものなのだろう。謂わば、人気のない穴場には福があるという事なのだ。
そして、今のこの状況に更に浮かれてしまう者もいたのだった。
「鈴仙さん、こうしていると、いかにも冒険しているって気持ちになりますねぇ〜」
「勇美さん、気を引き締めて下さいってば〜……」
対して鈴仙はその勇美の締まらない態度に呆れてしまう。
しかし、それと同時にそれも頷けるかと思い直しもするのだった。それは勇美にとってこの旅で見る物全てが新鮮であるからだ。
だから鈴仙は勇美のそんな態度を少し許容する事にした。
「……でも、そういう純粋な気持ちも大切だから、あくまでも程々にするなら良いですよ」
「鈴仙さん……」
そう言われるのが勇美にとっても意外だったようで、少し驚いてしまうのだった。
だが、悪い気はしなかったのだ。鈴仙がそのように気を掛けてくれる事に、勇美は純粋に嬉しさを感じた。
「ありがとうね、鈴仙さんにそう言ってもらえると心強いです」
「こちらこそ、勇美のその振る舞いには元気付けられますよ」
そう鈴仙は言いながら今までの自分を思い返していたのだった。──今の勇美のように物事を楽しんでいられた事が自分には一体どれだけあったかと。
それは自分の記憶が正しければ、月にいた頃は少なかった筈である。無理もないだろう、地上からの驚異に備えて兵隊として戦闘訓練を積まされていたとなれば。
だが、今は違うのだ。幻想郷に降り立った事により本心から楽しいと思えている自分がいるのだ。
その事に対して鈴仙は感謝しているのだった。その機会を作ってくれた幻想郷にも、口実を取り繕ってそれを味わう事を許してくれている依姫に対しても。
そう、正に今の旅はその二つの概念を護る為のものであるのだ。その事が鈴仙が純粋な妖怪でありながら異変解決に今向かっている一因かも知れない。
そして、彼女には今どこか危なっかしいながらも意外と頼りになる相方でもある勇美がいるのだった。
つまり、鈴仙は今一人ではないという事である。これは彼女にとって心強い事だろう。
故にか、彼女の今の気分も自然と高揚してきていた。
「それでは勇美さん、足元に気を付けていきましょうね」
「鈴仙さんの方こそ乗り気じゃないですか?」
「まあね」
そう言い合うと二人は笑いあったのだった。そこには人間と妖怪という垣根が越えた何かが存在していたのだった。
そうこうしている内に二人は洞穴内を進んで行った。途中で勇美が洞穴内に水滴が滴っているのを口実に、もし転んだ時パンツを濡らさない為に『穿かない』という対策を提案してきたのだが、その野望は鈴仙の手によって無事に阻止されたよう
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