第三章 リベン珠
第9話 メタボになるよ:後編
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混じった心持ちの元に言葉を返した。
だが、次の瞬間に彼女の表情は晴れ渡るのだった。
「でも、分かりましたよ。『それだけの事』だって♪」
「?」
その勇美の言い草に鈴瑚は訝った。今の自分の隙のない主張を『それだけの事』と吐き捨ててしまうとは勇美は一体何を考えているのかと。
「まあ見ていて下さい。『金山彦命』、『風神』様、そして『セベク』様。今こそその力をここに一つに!」
突如として三柱へと呼び掛ける勇美。しかも、新たに古代エジプト神話における鰐神のセベクも追加されていたのだった。
この謎の組み合わせによって、新たな勇美の分身の姿が形成されていったのだった。
そして、完成したその姿は……。
「……ワニ?」
そう鈴瑚が呟く通りの造型がそこには存在していた。
「名付けて【鉄鰐「メタル・クロコ」】ですよ♪」
勇美がそう呼ぶその姿は、屈強な鋼の体躯で構成された頭が鰐の、言うなれば『ワニ男』とでも称するべき様相だったのだ。
そのワニ男は、圧倒的な威圧感で鈴瑚を見据える。だが、彼女はそれでも脂汗を一滴垂らすだけで決して怯んではいなかった。
「どんな姿になっても地に足を付けている事には変わりありませんよ!」
言うと、これ以上の言葉は必要ないと言わんばかりに鈴瑚は再びグランドバニーショットを繰り出したのだ。またしても迫りくる背びれの脅威。
「それはどうでしょうか?」
だが、勇美は不敵にそう言うと、その鉄鰐に目配せをして指示を送ったのである。
そして、次の瞬間。その鰐は巨体であるにも関わらずに足を踏みしめると、体から勢いよく風を吹き出して上空へと飛び上がったのだった。
「んなっ!?」
その理不尽な光景に鈴瑚は素っ頓狂な声を出してしまった。無理もないだろう。空飛ぶワニなどと、何かの冗談にしか思えないのだから。
「これで、地に足を付けているが故の弱点は克服出来ましたよ。──それじゃあ今度はこちらから行かせてもらいますよ♪」
そう勇美が言うと、その飛行鰐は上空で軌道を変えて真っ直ぐに鈴瑚目掛けて文字通り飛んできたのだった。
──これは夢に出てきかねない情景だった。ワニ人間が空を飛んで突っ込んでくるなど、地獄絵図もいい所なのだから。
だが、この混沌とした展開の中でも平静を保っていた鈴瑚は今後自分を誇っていいだろう。
鈴瑚がそう対処出来たのは、彼女には奥の手が存在したからだった。
「やれやれ、これはとっておきだから、みだりには使いたくなかったんですけどね……」
そうポツリと呟くと、鈴瑚はここでスペル宣言をした。
「【火兎「兎と香辛料」】」
その宣言の後、彼女は腰を屈めそのまま体のバネを利用して跳躍を試みた。
それと同時であった。鈴瑚の足から炎が吹き出したのだ。その事により彼女の跳躍は飛躍的に増
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