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MOONDREAMER:第二章〜
第三章 リベン珠
第8話 メタボになるよ:前編
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だかのように朝日が顔を覗かせているのだ。それにより辺りは群青色の中に心地よい橙色が混じっていて、早く朝に起きて程よい気だるさに包まれている勇美達の気分を高揚させてくれるのだ。
「本当に素敵よね」
 その勇美の意見には鈴仙も賛同するのであった。彼女が元いた月にもそういう綺麗な情景はあったが、生命が地に足を付けて育まれ、そして『全てを受け入れる』性質を持った幻想郷には敵わないと実感してしまうのだ。
 だが、今はこの光景に余り酔いしれてばかりもいられないのだ。月の者達によって起こされている異変をいち早く解決に向かわねばいけないのである。
 殊更、今鈴仙の案内で向かっている場所は『内容が内容』なだけに絶対に地上の者達に悟られてはいけないのだ。それも彼女達が朝早く守矢神社を出発した理由なのであった。
 そのようにして日の出の闇と共に行動を進める二人であったが……どうやら湖には先客がいたようだ。
 その者は橙色の半袖のシャツに、脚部がかぼちゃを彷彿とさせるような膨らんだズボンを履いている。その形状は『ハーレムパンツ』というものに似ているようだ。
 顔は金髪のショートヘアに帽子、そして何といってもその間から生える兎の耳だろう。
 その耳は下に垂れていた。帽子を被っているからだろうか、それとも彼女の耳がそういう性質だからだろうか。
 詰まる所は……。
「あなたも玉兎さんなんですよね?」
「あ、始めまして。私は『鈴珸』といいます。二つ名で『橘色のイーグルラヴィ』等と名乗らせてもらっていますよ」
 ちなみに清蘭は『浅葱色のイーグルラヴィ』ですよと『鈴珸』と名乗った玉兎は付け加えた。
 鈴珸はそう勇美と話をしながらも、手に持った団子の串から一粒噛むと、それを口の中に引き寄せてもぐもぐと食べ始めたのだ。──会話中であるにも関わらず。
 それにはさしもの勇美も呆気に取られてしまった。
「……食いしん坊さんなんですね……メタボになりますよ」
「まあ私の能力の関係上、団子の定期的な摂取は欠かせないのですから多目に見てやって下さい。それに、食べた分のエネルギーはちゃんと消費しているから心配には及びませんよ」
「そういう勇美さんだって、食いしん坊じゃないですか。昨日の時点で清蘭からシチューをお裾分けしてもらっていたし……」
「う、確かに……」
 鈴仙にそう指摘されて、自分も人の事が言えないなと勇美は自嘲するのだった。そして、この会話で出た名前を聞いて鈴瑚は話の方向を変える事にしたようだ。
「あ、そうそう。清蘭から聞きましたよ、面白い人間と出会ったって。あなたが黒銀勇美さんですね」
「はい、そうです。私がその黒銀勇美です」
 そう返事を返しつつも、結局は清蘭はこうして仲間に知られたのだと勇美はその事を受け入れようと思うのだった。
 そして、鈴瑚とは
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