第三章 リベン珠
第7話 今日はここまで
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清蘭と弾幕ごっこに勝利した勇美と鈴仙のコンビ。そして勇美はその勝利を条件にして清蘭から食事をせびるのだった。
「う〜ん、美味しいクリームシチューだね〜♪」
そうのたまいながら勇美は清蘭から、本来は他の玉兎用の食事を施してもらっていた。
その味は、正に絶品であった。肉類は入っていなかったものの、じゃがいもやブロッコリーや人参といった野菜が見事にクリームに溶け込んだ完成度の高いものだ。
口に含むとクリームのスープが中に浸透していき、野菜を噛めば優しく柔らかく砕けていく。
その味と食感の芸術を、勇美は思う存分に堪能していったのである。
そう……勇美だけである。鈴仙の方はというと彼女は食事を提供してもらう事を遠慮していたのだ。
それは別に鈴仙が謙遜している訳でも、清蘭が意地悪をしている訳でもなかったのだ。その理由を鈴仙は今しがた口にする。
「勇美さん、さっきお昼食べたばかりでしょ〜!」
その言葉が事の全ての真相であった。──要は勇美は既に先程食事を済ませた筈なのに再び食べているというのが現状なのである。
そんな醜態を見せつつも、勇美は平然とのさばる。
「だって、清蘭さんと弾幕ごっこをしたらお腹が空いたんですもん♪」
「いんや、あなたはそもそも最初からご飯を食べる気だったでしょ……」
「それもそうか〜」
等と二人はやるせない不毛なやり取りを繰り広げ、そんな話をしつつも勇美は綺麗に清蘭からご馳走になった料理を完食するのだった。
「ごちそうさまでした〜♪」
そう満面の笑みで以て、勇美は食後の挨拶をそつなくこなした。
「まあ……程々にね……」
清蘭は取り敢えずそう言葉を返しておいた。こればっかりは『お粗末様』と快い言葉を掛ける気にはなれなかったからだ。
「食器はここに置いておいてくれればいいよ」
だが相手は客人なのだからと、皿洗いの要求はしない辺り、清蘭の人の良さが窺えるというものであろう。
「ありがとう清蘭さん」
そんな彼女の何気ない気配りに、勇美も嬉しくなって笑顔で返すのであった。
そうしてこれにて勇美達と清蘭はお別れとなるだろう。その為に鈴仙は勇美を促すべく言う。
「それじゃあ勇美さん、先を急ぎましょう。清蘭もお世話になったわね」
「あ、ちょっと待って下さい。最後にいいですか?」
「「?」」
これで解散になるかと思われていた所での勇美の物言い。一体何事かと思い玉兎二人は首を傾げる。
その疑問をぶつけたのは清蘭の方であった。
「勇美、一体何なの?」
「それはですね……。こんな事突然言うべきか迷ったんですが、清蘭さん、依姫さんの所で鍛練を積むのはどうですかって思ったんですよ」
「これまた突然ね……」
勇美のその進言に清蘭は意表を付かれつつも、努めて平静を装って言った。
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