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MOONDREAMER:第二章〜
第三章 リベン珠
第7話 今日はここまで
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に口の中で引き立てていったのだ。詰まる所は……。
「おいし〜☆」
 その言葉を導き出す事しか、勇美には選択肢は用意されていなかったという訳である。
 それは正に至福の一時であった。だが、その貴重な瞬間を打ち砕く言葉を神奈子は放つ。
「ところで勇美、早苗は相変わらずか?」
「うえっ、えふっ、げふっ!」
 それにより勇美は盛大にむせてしまうのだった。
「あ、悪い悪い」
 その事態を招いてしまった神奈子は素直に謝る。もしかしたら彼女には天然な所があるのかも知れない。
「ええ……まあ……」
 対して勇美は漸く体制を整えて返した。
 折角絶品の天ぷらに舌鼓を打っていたというのに、全くをもって水を指された気分である。
 そんな勇美に、神奈子は少し申し訳ない気持ちとなりながらも続けた。
「まあ勇美には迷惑を掛けているかも知れないが、前にも言ったけど早苗は自分以外の外界の人間に会えて嬉しいんだ。どうか多目に見て欲しい」
「か、神奈子様ってば……」
 神奈子にそのような事を言われて、早苗は気恥ずかしい心持ちとなってしまう。その事を指摘されると自分としてもこそばゆい気持ちとなってしまう。それは彼女にも自分が羽目を外してしまっている自覚があるからだ。
 早苗がそのような葛藤を抱えていると、それに助け舟を出したのは意外にも勇美であった。
「まあまあ神奈子様、私は早苗さんの事を疎ましく思ってはいませんから。ちょっとアプローチが過激かなとは思いますが」
「勇美さん……」
 その勇美の言葉を聞いて、早苗は天にも昇らんばかりの心地となってしまった。
 今のように自分を気遣ってくれる勇美を益々愛おしく感じるのだった。
 今すぐにでも抱き締めて、すりすりして、挙げ句の果てに今日は自分の家に泊まってくれるので一緒にお風呂に入る誘いまでしたくなるのである。
 だが、その溢れ出すような想いを、早苗は今回飲み込んだのだ。
 何故なら、今回勇美達は異変解決の為に奮闘しているのである。それを邪魔してはいけない事は、さしもの早苗とて理解しているのであった。
 早苗はこの場はその熱すぎる想いを抑える事に成功していた。その中で次に口を開いたのは諏訪子だ。
「鈴仙も頑張ってね」
「あ、私ですか?」
 突然話題を振られて鈴仙は驚いてしまった。
「そう、あなた。何たってあなたのようなケースは珍しいからね」
「と言いますと?」
 諏訪子が一体何を言わんとしているのか計りかねて、鈴仙は首を傾げる。その際に彼女自慢(?)のしわしわの耳が揺れ、それを見て諏訪子は何か愛しいものを感じてしまった。
 それはさておき、諏訪子は続ける。
「あなたのように純粋な妖怪が異変解決に向かうってケースは珍しいからね。妖怪は基本的に異変を起こす側だからね」
「あ、言われてみればそ
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