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MOONDREAMER:第二章〜
第三章 リベン珠
第7話 今日はここまで
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しかし、それを文は諭すように言う。
「いいえ、あなたも今の月の者達が起こしている異変を知っているでしょう? 今この者達はそれを解決に向かおうとしているのです。だから、ここは多めに見てあげなさい」
「……」
 文に言われて天狗は暫し無言になってしまうが、ここで気持ちを持ち直して言った。
「……分かりました、文様がそう仰られるのならこの場は引きましょう。ですが、この者達が何かしでかしたら容赦しませんよ」
「分かっています。もし不手際があれば私としても黙ってはいませんから」
「それでは、失礼しました」
 そう言って天狗はこの場から飛び去っていったのだった。後に残ったのは射命丸文だけである。
「勇美さん、知り合いなの?」
「ええ、私の目標の為に少し前からお付き合いしている仲です。それにしても凄いですね、文さんが……」
 そこで勇美が一旦言葉を区切ると、にやりとどこか嫌らしい笑みを顔に貼り付けて続けた。
「融通利かせてくれるなんてね」
「あやややや!?」
 手痛い所を勇美に突かれて、文は思わず上擦った声を漏らしてしまった。
 だが、さすがは基本的に冷静な判断力の持ち主である文である。少し取り乱してしまったものの、すぐに持ち直して勇美に言った。
「勇美さん、今は非常事態ですよ? いくら私でも物事の分別はするというものです」
「そうですよね。何はともあれ助かりました」
 言って勇美は文に頭を垂れるのだった。それを見た鈴仙も、この者には紳士的にしておくべきだと踏んで彼女に話し掛ける。
「文さん、私も度々取材させて頂いてますね。それに加えてどうやら勇美さんがあなたにお世話になっているようで」
「ええ、彼女が持ちかけてくれる話は『文々。新聞』のいい記事に出来ますからね、今回の話も期待していますよ♪」
「はい、大船に乗ったつもりで待っていて下さいね。私の方も文さんの物書きとしてのセンスは参考にさせて頂いていますから」
 そう二人は言い合って微笑み合ったのである。そこには既に友情と呼べるものが出来上がっているようであった。
 そして、鈴仙はやや確信めいたものを感じるのだった。──やはりこの妖怪は融通が利かない存在なのだと。今回自分達を助けたのは、文自身の記事のネタを守るという確固たる信念の元に行われた、つまり自分のルールに忠実に従ったに過ぎないのだと。
(でも……それでいいか)
 だが鈴仙はそう思う事にしたのだった。結果論ではあるが今回文には助けられたし、自分のポリシーには忠実である方が幻想郷らしいからと感じたからである。
「それでは、また何かあったらどうぞ」
「助かりましたよ、文さん♪」
 勇美にそう言われながら文は颯爽とその場から風のように飛び去ったのである。
 いや、風そのものと言った方がいいだろう。彼女の能力は風を操る
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