第三章 リベン珠
第7話 今日はここまで
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ね」
清蘭はそう言いながら、誰かにお礼を言うなんて自分の柄じゃないなと心の中で自嘲していた。ましてやそれが敵として現れた者に対してとなれば、その思いも一入となるだろう。
「こちらこそ、シチューをごちそうしてくれてありがとうね。月製のシチューってのもいいものだったよ♪」
「そう言ってもらえると悪い気はしないわね」
そう勇美と清蘭は言い合って、互いに固い握手をしたのだった。
ちなみにその後清蘭は、きっちり仲間への緊急要請は行った訳であるが。
◇ ◇ ◇
妖怪の山。それは文字通り妖怪達のみが住処としている山である。その例外として勇美も関わった事がある東風谷早苗、八坂神奈子、守矢諏訪子といった守矢神社一家が、外の世界で信仰を集められなくなったが為に幻想郷に来てここに住み着いている訳だが。
そのような例外が起こりはしたが、基本的には妖怪の山は妖怪の領域であるのだ。故に……。
「やっぱりここは部外者には手厳しい対応をしてくるわね……」
「依姫さんが私にここに近付けさせたくなかった訳がよく分かりましたよ」
鈴仙と勇美が愚痴るに至る事となっていたのだ。
彼女達が妖怪の山へ足を踏み入れるや否や、当然とばかりにそこの住人である妖怪からの『洗礼』があったという事である。
そう、つまり妖怪の山の妖怪達は排他的なのである。故に部外者は歓迎しないのである。
それは人間である勇美には勿論、同じ妖怪である鈴仙に対しても変わらなかったのだった。
それにより二人は急ぎたい所だというのに、妖怪達の相手をする事となり手こずってしまっていた。
そう二人が煩わしく思っている最中にも、新たに『歓迎者』は現れるのだった。
「ここから立ち去れ!」
そう言ってこちらに声を張り上げてきたのは、背中に羽根の生えた、下っ端の天狗であった。そして、それはもう見慣れた光景なのである。
「またですか」
「そのようですね」
二人はうんざりとした様子で言い合うと、その天狗に向かって各々の銃を引き抜いて向ける。
願わくば余り傷つけたくはないのだが、これも先へ進む為だと割り切って二人は銃口を引こうとした、その時であった。
「待ちなさい!」
そう、辺りにどこか生真面目そうな声が響くのだった。そして、その声に勇美はとても馴染みがあった。
「文さん!」
勇美はその者の名前を口にした通り、目の前に現れた存在は、天狗の中でも高い地位に就いている、鴉天狗である射命丸文なのだ。
「この戦いは無意味です。なのでここは私に免じて引いてもらえませんか?」
文がそう言葉を向けたのは下っ端の天狗の方であった。それを聞いて天狗は意表を付かれてしまう。
「ですが文様、この者達は部外者であって……」
だが、天狗はなけなしの勇気を振り絞って文に食って掛かる。
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