第三章 リベン珠
第5話 遂に現れた存在:前編
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勇美と鈴仙が旅の途中での昼食後、互いに今回の異変解決への意気込みを語った後の事であった。
ふと、勇美が違和感を感じたのである。
それは、彼女の鼻孔をくすぐる存在であった。つまり……。
「超イイ匂いビックリ♪」
食欲をそそる香りという事であった。勇美のその言い回しは些か変であるが。
「……♪」
その匂いの誘惑に勇美は勝つ事が出来なかったようだ。彼女はその匂いに誘われるがままに、ホイホイ(匂いの発生源へと)着いて行ってしまったのだ。
「勇美〜〜!!」
この勇美の醜態には、鈴仙も慟哭するしかなかったようである。彼女の魂の嘆き声である。それに、言っておかなければいけない事がある。
「私達、今し方お昼食べたばかりじゃないの〜〜〜〜〜っ!!」
その鈴仙の叫びは妖怪の山の麓の森中に響いたとか響かなかったとか。
◇ ◇ ◇
勇美が匂いという糸に操られるマリオネットの如く、一頻りたぐり寄せられた所で彼女は口を開いた。
「……鈴仙さん、今私冷静になりました……」
「……今更ぁ……」
項垂れながら言う勇美に、鈴仙は呆れるしかなかった。そして今確信した。
──こんな相方で大丈夫か? 大丈夫じゃない、もっといい相方を頼む。
それが本音だったが、鈴仙はもう後には引けない状態となっていたのだった。
こうなったらもう、自分がしっかりするしかないと心に誓うのだった。自分はリーダー向きの性格ではないが、ここは腹を括るしかないのである。
鈴仙がそのように一世一大の決心をしている最中、勇美は再び口を開いた。
「この先に『あおし様』はいないですよね? 寧ろ、ホイホイ着いて行っちゃったから、青いツナギの人がいたりして」
「どっちもいないから安心しなさい」
鈴仙は的確に勇美に突っ込みを入れておいた。そして、彼女に促す。
「さあ、気が済んだ所で旅を続けましょう」
「でも、おすそわけ位なら許してもらえるかも知れないからぁ……」
うわぁ、まだ食べるの諦めてなかったか。そう鈴仙が頭を抱える中、勇美はその匂いの元へと足を踏み入れたのである。
「勇美さんのどあほ〜☆」
最早突っ込みを入れるのも鈴仙は億劫になっていたのだった。そうしながらも彼女は勇美の後を着いて行き……。
「!」
そこで目にしてしまったのだ。
その者は『あおし様』でも『青いツナギの男』でもなかったが、色々と『青い』存在だったのである。
まず、髪が青であった。それをややウェーブの掛かったロングヘアーにしている。
そして、服装も青いワンピースであった。だが、普通の現代人の日本人が着るような一般的な物ではない。
そして、極め付きは、頭に生えた兎の耳であった。それも、鈴仙のようにしわしわくしゃくしゃの地上の兎には見られない特徴的な様相のそれは…
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