第三章 リベン珠
第4話 始まった冒険
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
勇美が綿月姉妹、特に依姫を敬愛している事は鈴仙とて周知の事実だったのである。
だが、鈴仙は彼女達の元から逃げて来た身である。故に鈴仙は思い悩んでいたのだ──今更彼女達にどの面を下げて会うのだと。
そんな鈴仙の心境を察したのか、勇美はこう言う。
「早く依姫さんと豊姫さんに会いたいのは、特に私だから、鈴仙さんは気を張り詰めなくていいと思うよ」
「でも……」
勇美の意外な慰めの言葉に嬉しく思いつつも、やはり鈴仙は思い悩んでしまうのだ。
「前にも似た話になったと思うけど、私がお二人の事を想うのは、私からあの人達を求めたからだよ。
それに対して鈴仙さんは物心ついた時から兵として訓練させられていたじゃないですか。状況が違うんですよ」
そこまで言い切ると、勇美は一旦そこで一呼吸置き、そして鈴仙に質問をした。
「鈴仙さんは、別にお二人の事が嫌いじゃないですよね?」
「!」
その言葉に鈴仙はハッとなってしまった。その一言に彼女の中にモヤモヤと渦巻く何かを取り払う力があったのだ。
そして、心が雪解けのような心地好さに包まれながら、鈴仙は素直な気持ちで答えを返した。
「ええ、もちろんよ。あの二人には迷惑を掛けてしまった申し訳ないと思うくらいで、嫌いになるなんて言語道断ですよ」
その言葉の後に鈴仙は付け加えた。自分がこうして今地上にいられるのも二人が気を利かせてくれているからこそだという事も気付いていると。
そこまで聞くと、勇美は満面の笑みで持って鈴仙を受け止めた。普段は小柄なその姿らしい愛くるしい振る舞いをする彼女が、今回ばかりはまるで菩薩のような神々しさすら感じられたのだ。
「その気持ちがあれば十分だと思いますよ。それにお二人も鈴仙が引き摺って思い悩むのを望んだりはしないでしょうから」
「そうね……、勇美さんありがとうね。お陰で吹っ切れる事が出来たわ」
「それは良かったですよ♪」
完全ではないが迷いを断ち切った鈴仙と、それを嬉しく思う勇美。ここに一層二人の絆は深まったのだった。
「それじゃあ鈴仙さん、旅の続きをしましょうか?」
「ええ!」
そして二人の道中は再開されようとしていた。
していたのだが……。
「ん?」
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ