第三章 リベン珠
第4話 始まった冒険
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景に呆気に取られながらも、鈴仙は勇美に賛成するのだった。超然的演出も食欲を邪魔する事は出来なかったようだ。
こうして二人の、旅の途中でののどかな一時が始まったのである。
「う〜ん、おいし〜♪」
まず舌鼓を打ったのは勇美であった。おにぎりの塩加減、米の食感、海苔の質、具の梅干しの米との絡み具合、どれも取っても一級品だったのだから。
「それはもう、お師匠様の握るおにぎりだからね」
鈴仙も勇美の意見に賛同するのだった。永琳が薬の知識が豊富故に、生きる糧になる食べ物の扱いも長けている事を今の一番弟子である彼女は良く分かっているのだ。
こうして二人は『八意特性おにぎり』に魅了され食しながらも、鈴仙が口を開いた。
「それにしても勇美さん、随分と便利な物を貰ったものねぇ〜……」
呆れと感心とどこか卓越した感覚の下鈴仙が呟いた。それに勇美が対応する。
「全くですね。私も大それた物を貰っちゃったって自覚がありますから……。もしかして、紫さんは今回の異変の事を見越してくれたのかも知れませんね」
『それはさすがに……』そう言おうとした鈴仙であったが、寸での所でその言葉を飲み込んだようだ。
その理由は他でもない、八雲紫という存在そのものが掴み所がないからである。いくら鈴仙が昔は依姫、今は永琳という彼女以上の実力を持つ者の下にいるとはいえ、紫が常軌を逸した概念である事に変わりがないのだから。
だから鈴仙は、飲み込んだ言葉の代わりにこう答えるのであった。
「それも、有り得るかも知れないわね」
「鈴仙さんもそう思いますか?」
彼女が賛同してくれた事に、どこか嬉しいものを感じながら勇美はそう言った。
それはともあれ、美味しい食事というものは生きる糧なのだ。その命のご馳走を前にして、二人は黙々と口に運ぶのだった。
そして、気付けば二人とも『完食』していた。余談だが、こういう光景を表すのに実に歯切れの良い新語が作られたものである。
「あ〜、美味しかった〜」
「そうね〜」
普段から飄々とした勇美のみならず、普段は真面目でしっかりした鈴仙もこの時ばかりは気持ちが緩んでいたのだった。さすがは食の力といった所であろうか。
そのような心地好い満足の下、鈴仙は口を開いたのだ。
「勇美さん、この旅は大変なものになると思うけど、一緒に頑張りましょう」
そう勇美は鈴仙に言われたのである。それには勇美とて異論は無かったのだ。
「そうですね、幻想郷の為に、お互い頑張りましょうね」
そのように返した勇美に対して、鈴仙はこれを言うべきかと何か悩む仕草をしていた。それに勇美が気付く。
「どうしたんですか、鈴仙さん?」
「あ……、勇美さんはその……、依姫様と豊姫様の事も気に掛けているのよね……」
それが鈴仙が言おうか迷っていた事であった。
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