第三章 リベン珠
第4話 始まった冒険
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らしない口調で腰掛ける勇美に、鈴仙は呆れながら注意を促した。
「だって鈴仙さん。人間は妖怪よりも早く歳を取るんだよ〜」
「14歳の子供が何を抜かすか」
休憩に入るや否や、二人はそのようにやんややんやとしたやり取りをしていた。その様は実に粋のあったものである。
その事からも二人には絆が感じられるというものだろう。
そうこうして鈴仙とやり取りをしつつも、勇美は懐から『ある物』を取り出したのである。
それは、二個の赤いリボンであった。これはどこかで見覚えがないだろうか?
そう、これはかつて八雲紫から貰った、彼女の境界を結んでいるものと同じ物であるのだった。
これを用いて、勇美は一体何をしようというのか? 答えはすぐに分かるのであった。その裏付けに、鈴仙は勇美の行動に疑問符は浮かべてはいなかったのだから。
彼女が見守る中、勇美はその二つのリボンを縦に平行に持っていき、まるで宙に固定するかのような体制を取らせたのである。
否……、それらは『本当に宙に固定』されたのであった。
「うわあ……驚いたわね……」
当然鈴仙はそのタネのない手品染みた光景に驚愕してしまう。彼女とて幻想の世界で育った身であるが、この演出には鈴仙とて意表を突かれる他なかったのだ。
「そうですね、私も何度見ても驚きますね」
だが、一番驚いているのは勇美であった。当然かも知れないが、外界で生まれた勇美の方が遥かに幻想の産物に対する免疫がないというものである。
彼女は『これ』を使うにあたり、その使い方を今まで試してきたのであるが、今の光景の刺激は何度見ても慣れはしないのだった。
だが、いつまでも驚いてはいられないだろう。勇美はリボン二つを宙に固定するという奇術を披露した後、次なる行動に出る。
おもむろに彼女は二つのリボンの間に手を差し入れたのである。そう、文字通り『差し入れ』たのだ。
彼女の手はリボンの間に現れた空間の裂け目の中に入っていたのだった。そして、勇美はそこからある物を取り出したのである。
そう、このリボン二つは謂わば『携帯型スキマ』といえるものであったのだ。こうして『境界』を持ち運ぶ事が出来、更には八雲紫本人以外にも取り扱う事が出来る代物なのである。
その中に物品を入れて置けば……最も有名な所で例えれば『四次元ポケット』のように運用出来るという物理法則を超越した、存在自体が反則なアイテムとして活躍させる事が出来るという寸法だ。
そんな、言ってしまえば『チート的アイテム』の効力を借りて勇美が取り出した物は……、おにぎりを包んだ物が二つであった。それは勇美と鈴仙の昼食を賄うには十分な量がある。後は二人分のお茶もあった。
「さあ、鈴仙さん。ここで一緒にお昼にしましょう」
「そうね。私もお腹が空いているし」
奇術染みた光
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