第三章 リベン珠
第3話 動き始める事態
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予もなかったのである。そして、万を持して永琳が開発していた物が完成したのであった。
◇ ◇ ◇
「はい、これが完成品よ」
そう言って永琳が差し出してきた物。それは瑠璃色の液体という、禍々しくも美しい代物であった。
「八意先生、これは……?」
「これは『紺珠の薬』というものよ。飲んだ者の肉体の働きを、月の民に対抗しやすくするのを手助けする物よ」
勇美の質問に、永琳は説明した。分かり辛いかも知れない言い回しだが、他に適切な説明がないと判断しての事であった。
「それじゃあウドンゲ、これを幻想郷の有力者の元へと送り届けて」
その永琳の指示に鈴仙が素直に従おうとする前に、そこに入って来る者がいた。
「待って下さい八意先生!」
永琳の事を『八意先生』と呼ぶのは一人しかいないだろう。そう、黒銀勇美その人であった。
「何かしら、勇美ちゃん?」
永琳は柔らかい笑みで以て勇美に続きを促す。態度は柔らかいが、今は急を要する事態なのだ、用はなるべく早く言ってもらわないといけない。
「あの……、その『紺珠の薬』。私に飲まさせて下さい!」
「……勇美ちゃん、その言葉の意味、ちゃんと理解しているわね?」
勇美の発言に、永琳は諭すように言った。それは落ち着いているが、重みのある言い方であった。だが、それは当然というものであろう。
しかし、勇美の答えはそれで揺らぐ事はなかった。
「はい、その薬を飲めば、月の方々と戦う事になりますよね」
「ちゃんと分かっているのね?」
「はい、でもこの異変は私が解決に向かいたいのです」
永琳に念を押されるも、勇美は怯まずにそう言った。そこには様々な想いがあったのである。
それは、一つに勇美にとって幻想郷が新たな故郷となったからである。だから、その大切な帰る場所を彼女自身の手で護りたいという想いがあるのだ。それに加え……。
「勇美ちゃん、依姫の事が大好きだったからね、分かるわ」
その永琳の指摘通りの事であった。勇美ほど依姫の事を敬愛する者はそうそういない事は遠目で見ても分かる事実であった。
大切な人を助けたい。その勇美の想いは決して見栄ではない純粋なものである事は永遠亭に住まう者なら誰しも実感出来る事だ。
「安心して、勇美ちゃんの分の紺珠の薬もちゃんと用意しているわ」
「あ、ありがとうございます八意先生!」
永琳のその機転の利きっぷりとその配慮に勇美は嬉しくなるのであった。
だが、その展開を不安そうな表情で見ていた者があった。
「ウドンゲ、勇美ちゃんの事が心配なのね?」
そう、永琳の一番弟子の玉兎の鈴仙・優曇華院・イナバその人である。その鈴仙は永琳に言葉を返す。
「当然です、勇美さんは人間なのですよ。お師匠様の発明品があるとはいえ、月の民に立ち向かわせるなんて無謀も
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