第三章 リベン珠
第1話 新たなる友:前編
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
想郷の住人らしく弾けた感性を持つようになった彼女とて受け入れ難い流れであったのだ。
勇美は決めたのである。これから幻想郷で生きていく上で『自分らしくありたい』と。だから、今回の騒動と同じノリで参加しては些か『自分らしくない』と感じたが故の決断であった。
だが、この『都市伝説騒動』において勇美は何も得なかった訳ではないのだ。その証拠の存在が今勇美の目の前にいる。
それは他でもない、その都市伝説騒動の張本人たる宇佐美菫子その人であった。
勇美はその騒動の後、菫子と交友関係を結ぶに至ったのだ。それは、二人とも種族が人間かつ、同じ『外来人』という共通点まで持ち合わせている為、何か互いに通じるものがあったようだ。『いさみ』と『うさみ』の語呂が似ているのも一因だったようだ。
そして、勇美が菫子に入れ込むに至る理由が他にもあったのだ。それが、勇美が小説家を目指す上で交流を持った第三の人物である理由であった。
菫子は自分が立ち上げた『秘封倶楽部』というサークルで公表するブログに幻想郷での経験を、『自分が見た悪夢』と称して乗せるという活動を始めたのである。
つまり、菫子はブログの記事を書く者という事である。しかも、勇美も幻想郷で経験した事を噛み砕いた内容の小説を将来的に発表しようと考えているのだ。
故に、言うなれば勇美と菫子は『同志』も同然であったのである。だから勇美は彼女と関係を持って損はない、寧ろ得られるものの方が大きいと踏んだのだった。
そういう経緯で二人の仲は良好となっていった。そして、今の状況に至っているという事である。
今のここは夜中の人里である。妖怪の存在する幻想郷では基本的には『彼ら』の時間となる為、人間は本来ならば今行動をしていてはいけないのである。
だが、人里の守護者の上白沢慧音の監視下の元で安全を確保した上で、夜の人里の広場に大勢の里の住人が集まっていたのだった。
そして、勇美は改めて目の前の菫子に目を向ける。
彼女の容姿は黒い帽子に赤掛かった茶髪に赤縁の眼鏡、彼女の名前の通りすみれ色が基調の服装で長袖かつロングスカートというものであった。
それは、16歳の女子高生にしては些かガードの固い出で立ちと言えるだろう。そして、現代の日本人ならほとんど普段着にしないようなマントまで装備しているのだった。それもドラキュラ伯爵が好むような襟がとがり、黒の表地に赤の裏地という重厚感極まりないものである。
それは、彼女が外界で孤独を好む性格だったが故に、一般人が近寄りがたいと思うような格好を望むようになっていったが故かも知れない。そんな彼女も件の都市伝説騒動で幻想郷の人妖と関わり合う……もとい戦うといった経験を経て、友達を作る事も悪くないかも知れないという考えに至った訳だが。
その菫子の心境の変化も、勇美が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ