第57話 エル=ファシル星域会戦 その1
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とした単縦列陣形を麾下全部隊に命じ、警戒速度でひたすら一直線に惑星エル=ファシルへと向かうことを指示した。
なにしろ貴重な有人居住星系であるゆえに同盟軍は豊富な航路データと地理データを有しており、自軍規模の戦力を一撃で蒸発させることができる戦力が伏兵として配置できる箇所がないこともわかっているし、各部隊の指揮官も作戦会議の場で周知している。だがわかっていてもここまで即決できるかどうかは、指揮官の経験と気質だろう。
原作でも爺様は本質的には戦術家であって戦略家ではないと評されていたが、戦略家ではないとは言わないまでも一流の判断力を持つ戦術家で間違いはなかった。警戒航行速度で一八時間後、敵勢力の情報が第八七〇九哨戒隊所属の嚮導巡航艦エル=セラトよりもたらされる。
「発見せる敵は総数三三〇〇隻前後。惑星エル=ファシル衛星軌道上に三部隊に分かれて集結中。戦艦二五〇ないし三〇〇隻、巡航艦七〇〇ないし八〇〇隻、駆逐艦一八〇〇隻ないし一九〇〇隻。宇宙母艦は現時点で確認できず。残余は補助艦艇……とのことです」
ファイフェルが戦艦エル・トレメンドの司令艦橋に集まった俺を含む第四四高速機動集団の幕僚達に報告する。
「以後エル・セラトからの通信はありません」
「思った以上の索敵成果じゃな。会戦が終わったら彼らにウィスキーの一杯でも奢ってやりたいものじゃ」
爺様が司令官席で顎を撫でながら感嘆すると、モンティージャ中佐が人差し指を自分のこめかみに当てながらファイフェルに聞いた。
「通信状況を知りたい。特にデータ通信に紛れ込んでいる雑音とタイムラグ。それに切れるタイミングだ」
「すぐにオペレーターに確認させます」
ファイフェルが司令官席のコンソールを操作しオペレーターと連絡を取っている間、俺はモンティージャ中佐に視線を向けると中佐は俺に諭すような視線を向けてから言った。
「通信中に地理環境以上のジャミングが入っているならば、敵はすでに臨戦態勢とみていい。入っていなければいまだ集結途上の可能性を考えるべきだろう。タイムラグは巡航艦の移動状況。切れるタイミングは……まぁ君の想像に任せるよ」
それはこれ以降、エル・セラトから情報が得られるかどうか、という判断を下すものであろう。最悪は通信中発見されての撃沈だ。敵に此方の意図を再確認させ準備されるばかりか、以後の情報が入らない。哨戒隊の他艦が触接をする可能性はあるが、司令部からの指示もなく自主的に索敵範囲を変更するのは別の危険をもたらす為、今回哨戒隊にその許可は出していない。だが果たして、戻ってきたファイフェルの報告は首を傾げるものだった。
「通信文に想定以上のエラーなし。また正常な手順で通信が切れたそうです」
「タイムラグは?」
「それもないそうです。オペレーターによれば艦が静止し
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