悲劇の立ち合い
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「はあ、はあ……」
雨が、体に付着したもの全てを洗い流していく。道中に戦ってきたアマゾンたちの返り血、救えなかった人の血痕、自身の流血。
重くなったラビットハウス制服はこれまでの戦いでズタズタにされており、ようやく見滝原中央病院にたどり着いた可奈美は、門に腕を寄りかからせる。
「やっと……着いた……」
可奈美は大きく息を吐く。黒焦げになった敷地を見渡し、一瞬立ち入るのを躊躇した。
「木綿季ちゃんは、大丈夫なの?」
アスファルトがところどころ焼け焦げ、より濃い黒点となっているアマゾンの死体。それがどんな人物だったのかどころか、どんなアマゾンだったのかさえも、もう分からない。
その遺体たちは、消滅することなくその場に物言わぬ物体となっていた。黒ずんだ転がる物体一つ一つが溶原性細胞の被害者だと考えると、やるせない気持ちになる。
「……」
すぐ近くの黒焦げたアマゾンを起こす。衣服も灰となり、アマゾンの恐ろしい形相も全て黒一色になっている。もはやどんなアマゾンだったかさえも分からない。
ここに倒れている者のほかに、病院に、はたしてどれだけアマゾンになってしまった人がいるのだろうか。
黒く、炭になって動かないアマゾンの死体を見下ろしながら、可奈美はそんなことを考えていた。
ウィザードがキックストライクで一掃したアマゾン達。
「……木綿季ちゃん……」
まだ無事だろうか。そう考えながら、可奈美は病院の敷地に立ち入る。
アマゾンの体を避けながら、早歩きをしていく。
「あれ……?」
ようやくアマゾン達を乗り越えた可奈美は、病院の玄関が潰れていることに唖然とする。病院内で爆発があったかのように、ところどころにコンクリートの破片が融解しかけている。
「これ……」
病院の内部が無数に崩れ、入口が落石によって塞がれている。刀使の能力を駆使すれば通れなくはないだろうが、時間が惜しい。
「裏口はどうだろう……」
可奈美は、正面からの侵入を諦め、病院棟に沿って裏口を探す。アマゾンを避けて歩きながら、ようやくドアを見つけた。
「ここから入れる……!」
急いで扉を開け、病院に突入する。
可奈美が入ったのは食堂らしく、銀の台が無数に並んでいた。
「……ここって、搬入路なんだ」
可奈美は少し慎重に、病院の内部へ入っていく。
一階の奥に位置されていた食堂の階段を伝い、木綿季がいる地下の階へ向かう。
だが、一段一段階段を踏みしめている間、可奈美は別のことを考えていた。
「……お願い。木綿季ちゃんが、下の階にはいませんように……」
病院に入ったときから、ずっと鉄の臭いが充満していた。
階段の各段差にも、多かれ少なかれ血
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