ターン37 白面金毛の悲願
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バラバラになる……そして最後まで、そのカードがチェーンされることはなかった。
「……なあ、巴よお」
「はい?」
それを見送った糸巻が、ようやく口を開いた。普段の調子に似合わない妙に神妙な様子に、わずかな違和感を覚えた巴がつい素の反応でそれに返す。
「アンタは、本当に大した奴だよ。絶対認めたくはないけど、まあ1回ぐらいは認めてやる」
「……いきなりなんですか、気色悪い」
「いや、別に。アンタはアタシの動きを読み切ったうえで、この状況に持ってきたんだろ?アタシの伏せるカードにブラフはない。いつだってアタシは前のめり、破壊待ちなんてまだるっこしいもん使うぐらいなら、自分が攻め込むためのカードをぶち込む。その辺の理解は、ひょっとしたらアタシ自身よりもアンタの方が深かったのかもな」
「……」
今度沈黙したのは、巴の方だった。糸巻がこの突然の独白で何を言わんとしているのかその真意を測りかねたというのもあるが、まさにそれはこのデュエルにあたって巴がデッキを調整する鎖に意識してきたことそのものであったからだ。いつだって前のめりで、停滞した時には自分から試合を動かしにかかる。熱しやすいくせに変なところでクレバーで、最近はやや錆びついていたとはいえ化け物じみた引きの強さを誇る。他にもあらゆる要素を、それこそ2枚の伏せカードがある際にサイクロンを手にした場合は右と左のどちらを破壊することが多いかに至るまで徹底的に計算したうえで彼はこの場所に立っている。
そしてそんな趣味嗜好のひとつが、相手に依存するカードを好まないという点であった。ゆえに彼女の繰り出すカードにブラフはなく、見えないままの1枚も常に最も効果的な発動の瞬間を狙っているだけにすぎない……それが、彼の得た糸巻太夫という女の結論だった。
ゆえに、彼は自分のカードがレッド・リブートにより止められた際、真っ先にデッキから直接セットするカードに砂塵の大竜巻を選んだ。闇のデッキ破壊ウイルスよりもより確実に、見えないカードを打ち抜くために。
その判断に迷いはないし、間違っているとは思わない。目の前の相手が糸巻太夫であるがゆえに、それは最適解となる。
「だからアタシは、ひとつだけ賭けに出た。アタシ自身よりもアタシのことを理解して、読み切って、その上でそれを上回るアンタを信じてな」
「何を……」
「本当は仕込み爆弾や不運の爆弾あたりのカードが欲しかったんだがな、なにせその辺のカードは例のデュエリストフェスティバルの時に大量回収されたあげく、どっかのバカがどさくさに紛れて持ち出しやがったからな。探しに探して、ようやくこれ1枚しか見つからなかったんだよ」
じろりと遠巻きに見守る鳥居に視線を送ると、無言で首をすくめて小さくなる姿がわずかに彼女の目に入った。それを見て小さくくすく
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