ターン37 白面金毛の悲願
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は天井から断続的に落ちて汚らしく広がるのは液状の、液体の闇。そして先ほどまで壁や床だったはずのものにとって代わる、何者も通さない濃縮された質量を持つ固体の闇。留まる者の心を蝕み……いや、そもそも蝕むとは何だろう。ここには初めから、闇しかなかったというのに。全ての定義を塗り潰し、あらゆるものを上書きし、ただひとつの概念に全てを収束させていく。そこにあるものは、ただの闇だった。
そしてそんな闇の中から、巴の朗々とした声が響く。
「速攻魔法、緊急テレポートを発動。デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター、レベル2のクレボンスを特殊召喚します」
クレボンス 攻1200
「さらに牛頭鬼を通常召喚。このカードは1ターンに1度、デッキからアンデット族を墓地に送ります。私が選ぶカードは当然……九尾の狐」
「来やがったか……」
「ここまで妨害はなし、ですか。せっかく3枚も伏せておいて、そのカードは飾りなんですかね?」
「そんなに気になるなら、踏みつけるまで突っ込んで来いよ」
探りを入れに来た巴を、不敵に笑い飛ばす糸巻。意味ありげな目つきでほんの1秒足らず思案したのち、すっと上に向けた手の動きに従って2体のモンスターが宙に浮く。
「いいでしょう。レベル4の牛頭鬼にレベル2のチューナーモンスター、クレボンスをチューニング。異邦と化した故郷に、悪しき聖霊の夜を引く音がこだまする。シンクロ召喚、オルターガイスト・ドラッグウィリオン!」
☆4+☆2=☆6
オルターガイスト・ドラッグウィリオン 攻2200
闇の沼の一角が沸き上がり、漆黒の液体を全身から滴らせる異形の魔法使いが浮上する。笑顔の仮面を張り付けたような顔面に、この世の生物とも思えないような部位に配置された、それでいてその機能がなんなのかは理解できてしまう人とも動物とも取れない無数の手足。
それは例え打点が低くとも、強烈な制圧効果を持たずとも、レアリティが低いコモンカードであろうとも。遥か昔のプロデュエリスト時代より巴が愛用し、彼の戦いになくてはならない中核をなす1枚。全てを出し尽くすこの戦いには、欠けてはならないピースのひとつ。
「そこだな?永続トラップ、ディメンション・ゲート。アタシのフィールドのモンスター1体を選択し、ゲームから除外するぜ」
糸巻のフィールドから、イピリアの姿がかき消える。それを見て、巴が小さく賞賛の笑みを漏らした。
「なるほど、シンクロ召喚まで繋いだこのタイミングで、ですか。実に小賢しい話ですが……ここは大したものです、と言っておきましょう」
「アンタのお褒めの言葉なんざいらないね、虫唾が走る。だがま、アタシもひとつ褒めてやるぜ。その様子だと、自分が何されたのかを理解する脳味噌はちゃんとついてるみ
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