ターン37 白面金毛の悲願
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「では、始めましょう。今度こそ、私と貴女の戦いを邪魔するものは何もない……そして願わくば、これが最後であらんことを」
「その高慢ちきな鼻っ柱、ただへし折るだけじゃ足りないよなあ?昔のよしみだ、土下座のライブ映像はたっぷり全国生中継してやるよ」
遠く離れた家紋町でイレギュラーな事態が着々と進みつつあることなど、この場の誰も知る由もなく。心底愉しそうに笑い、心底おぞましいものを見る目つきでにこやかに呪詛を吐き連ねる2人はやはりどこか似た者同士であり、互いがそれに同族嫌悪を感じていることが手に取るようにわかるがゆえにその憎悪は加速する。
ドロドロした感情で息が詰まりそうな空気に若干引きつった顔の清明が、まだ思うように体を動かせない鳥居の体を軽々と背負って部屋の入り口、安全圏とはいえないまでも観戦に支障はない程度の位置まで下がっていく。その様子を視界の端に捉えつつも糸巻も巴もすでに意識するようなこともなく、そこは戦場の爆心地となった。
「「デュエル!」」
全く同じとしか思えないタイミングでデュエルディスクを展開し、初期手札を引き抜き、鬨の声を上げる2人。ランダムに決められるはずの先攻、後攻ですら、極限まで冴え渡りもはや未来予知のたぐいにまで達していた彼女らの勝負勘は察知していた。
「アタシのターン!さあて、どうしてやろうか……?あんまりモンスターを展開するのも、それはそれでつまらねえよな?カードを2枚セットし、イピリア召喚。このカードが場に出た時、アタシはカードを1枚ドローできる」
「ご自由に」
イピリア 攻500
先陣切って召喚されたのは、甲高い鳴き声を放ち灰色の体と長い尾を持つ爬虫類。派手さはないが堅実なドロー効果で先攻の数少ないディスアドバンテージである手札を補充し、引いたカードをロクに見もせずにすぐさまセットする。これで糸巻のフィールドには、伏せカードが3枚。
なんてことのない、どちらかといえば彼女にしては大人し目な立ち上がり……しかしそれは、目の前の相手を知り尽くしたうえでの行動だった。
「そして私のターン、ですか。ならば手札から、悪王アフリマの効果を発動。このカードを捨てることで私のデッキからフィールド魔法、闇黒世界−シャドウ・ディストピア−を手札に加えます。そしてそのまま発動、このカードが存在する限り全てのフィールド上モンスターは闇属性となります」
イピリア 地属性→闇属性
前触れもなくチカ、チカと断続的に、天井の明かりが点滅し始めた。明度が落ちたことで四方から忍び寄ってきた闇はにじみ出る悪意を隠そうともせずに周りを侵食し、ドロドロとした質量すらも持つ光を通さない闇の粒子が粘着質に垂れ下がる。
周りを埋め尽くして漂うのは霧状の、気体の闇。足元からどろりと湧き上がり、あるい
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