第56話 冥界訓練便り、そして
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用意できるんだ……」
変更につぐ変更で神経をすり減らしたカステル中佐の視線の先は、当然旗艦エル・トレメンドの戦闘艦橋真正面にあるメインスクリーンに映った、二〇〇〇隻近い補給艦と工作艦の群れだった。
カステル中佐の権限で動かせられる部隊の殆どがイゼルローン攻略部隊に取られていることを考えれば、その権限を超越したところから持ってきたとしか思えない。俺も『魔法の壷』の中身を知りたいと思い、艦橋オペレーターの一人に敵味方識別信号で確認してもらうと、果たしてそれは第八艦隊の後方部隊であった。統合作戦本部査閲部の演習予定を検索すれば、果たして第八艦隊はリューカス星域ヴィットリア訓練宙域にて統合機動訓練が計画しており、先乗りしていた後方部隊が、再度の補給物資補充と要員休養の為「一時的に」ジャムシード星域まで戻って来ていたらしい。俺の報告にカステル中佐は小さく舌打ちした。
「先乗り休養の為に後方支援部隊を片道七日かかる星域まで後退させるなんて、冗談にしてはいささかきつい話だが、それに我々が助けられたのも事実だ。ありがたく受けておこう」
正規艦隊の統合機動訓練となればエネルギーの消費こそ激しいが、レーザー水爆や機雷と言った実弾の消耗はそれほどでもない。食糧や生活物資は長期にわたるものでなければ、戦闘艦艇の貯蔵庫で賄える。まして正規艦隊の後方部隊だ。半個艦隊程度のエル=ファシル攻略部隊の要求を満たすには十分な能力があるし、法的にも横流しではない。『融通』というレベルだろう。故にキャゼルヌはカステル中佐に『会計処理』と言ったわけだ。ただ相手は第八艦隊。司令官は当然あの黒い腹黒親父。後で何かしら礼をしなければ、後でどんな仕打ちが待っているかわかったものではない。
第八艦隊と自前の工作艦部隊の奮闘で、訓練と移動時に受けた部隊の損傷個所の修理が終わったのは、四月一〇日。後方部隊以外はまるまる四八時間の休養を得て、士気を回復したエル=ファシル攻略部隊はジャムシード星域を離れる。ここから一気にシヴァ星域を経由してエルゴン星域に進撃。エルゴン星域ウォフマナフ星系の前進補給基地にて最終の航行燃料補給を受ける。
そして機関部に異常をきたした巡航艦一隻とその護衛に残った駆逐艦一隻をエルゴン星域に残し、第四四高速機動集団と攻略部隊は帝国軍との交戦宙域となったエル=ファシル星域へと侵入を果たした。
宇宙歴七八九年 四月二〇日〇八〇〇時 戦艦エル・トレメンド座乗のアレクサンデル=ビュコック少将より、エル=ファシル攻略作戦の状況開始命令が隷下全部隊に発令された。
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