第56話 冥界訓練便り、そして
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残りを一つの部隊に纏めただけに過ぎない。辺境警備を主任務として訓練の充足もままならなかった奴らが見事な成績を上げているのに、ひるがえって自分達はいったい何をしているのか、と。
故に次に司令部から提示された小戦隊集中砲撃訓練、そして小戦隊移動集中砲撃訓練の内容に文句を言ってくる指揮官達はもう一人もいなくなった。どうやったら上手くいくか、本来それだけでは困るのだが内容の意義よりも結果の良化を求め、自分達で考え解決方法を探ろうとしてくれる。
だがそのせいで今度負荷がかかったのは訓練宙域管理部だった。小戦隊といえば哨戒隊や特別編成の隊を除いて一〇〇隻以上の艦艇が所属する。その主砲が全力で一点の目標に火力を集中する。結果は言うまでもない。直径五キロの小惑星はみるみるうちに削られて、消しゴムのように最後はボロボロになってしまう。その度に別の標的を引っ張って来なければならず、「少しは加減してください」という言外の抗議を俺はマスカーニ中佐から受ける羽目になった。
そんな感じで要領を得たのか八日目の昼過ぎ。第三四九独立機動部隊麾下の第四三八七巡航艦戦隊が、移動集中砲撃訓練で満点を叩き出した。全小戦隊の評価比数も九〇パーセントを超えている。
そしてその夜。査閲部が必死に評価作業を行って、訓練宙域管理部が次の訓練目標である可動目標砲撃訓練の準備をしている最中。統合作戦本部より爺様当てに超光速通信が入った。司令部の誰もが起きていたので大して問題はなかったが、伝えられた内容にカステル中佐が思わず下劣極まりない雑言を吐いて、ブライトウェル嬢に白い目で見られていた。
「作戦期日の延期命令。五日遅れて四月二〇日状況開始か」
イゼルローン攻略戦の準備が遅れに遅れていることを考えれば、予想できなかった話ではない。戦略的にエル=ファシル星系攻略とイゼルローン攻略戦の比重は前者より後者の方が大きいし、動員される兵力も物資の量も桁違いだ。それでもたった五日の遅れというのであれば、作戦より実行段階での問題発生ということだろう。
こちらとしてはイゼルローン攻略部隊の位置だけ理解してれば問題はない。訓練と休養に数日を確保できることを考えれば歓迎すべき話だ。もちろん、カステル中佐の血圧には気を付ける必要があるだろう。結局訓練の予定と補給物資の再配布を含めた計画の組みなおしを司令部は徹夜で行うことになった。
それから九日目から予備日を含めた一一日目まで、みっちりと砲撃訓練を行った部隊は、四月三日をして正式に『エル=ファシル星系攻略部隊』としての認証を宇宙艦隊司令部より交付され、訓練宙域からジャムシード星域カッファ星系へと移動を開始する。そこにはキャゼルヌが手配してくれた補給艦と物資、工作艦が待ち構えていた。
「いったいどこからアイツはあれだけの船と物資を
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