暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第55話 出動
[5/5]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
国に奪取されたエル=ファシル星系の奪還を行うことになる。編制されたばかりの部隊も多い。事前訓練はそのまま実戦に繋がる重要なものだ。諸氏の精励を期待する」

 続いて査閲部から派遣されてきたナージー=アズハル=アル・アイン中佐が自己紹介と訓練宙域の概要説明を、モンティージャ中佐が現時点におけるエル=ファシル星域および帝国軍の動向を、カステル中佐が補給箇所の説明を進め、最後に俺が訓練内容の説明に指名された。会議室の照明が落とされ、第四四高速機動集団司令部と他の司令部の間にある三次元投影機を使って説明する。だが説明を進めていくに従って、暗闇から疑問というか呆れたような溜息や鼻で笑うような嘲笑が聞こえてくる。まぁそれは当然だろう。内容としては士官学校五年生が練習艦隊で実施するような基礎レベルのものばかりだからだ。

 説明が終わり、照明が復旧すると、個々の幕僚の顔がはっきりと見渡せた。どの顔にも『親の七光りの少佐殿が作る訓練計画は所詮このレベルか』といった嘲笑が浮かんでいる。だがその中でアップルトンだけが相当深刻な表情で俺を見ていた。モンシャルマン参謀長が質問を受け付けると、即座に手を挙げたのもアップルトンだった。

「ボロディン少佐に質問したい」
 席から立ち上がったアップルトンは、周辺の幕僚達の視線を集めつつ、俺を見据えてはっきりと言った。
「この訓練内容でエル=ファシル星系攻略が可能と、貴官は考えているのか?」

 そう、その質問が欲しかったのだ。俺も対抗するように立ち上がってニッコリと作り笑いを浮かべてそれに応えた。

「この程度の訓練で満点が取れないような部隊であるならば、不可能だと言わざるを得ませんね」

 事前に内容を知っている第四四高速機動集団司令部と査閲班を除いた、全ての会議参加者の憎悪の視線が一気に俺に集中した瞬間だった。

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ