あたしってほんとバカ
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
ゃない?」
さやかは天井を指さした。
「ほら。あたしと事を構えるのは、そのあとゆっくりやろうよ。それじゃ、またね!」
そのままさやかは手を振りながら体重を移動し、窓からその姿を消した。
無意識に窓際へ急いだハルトだったが、もうどこにも彼女の姿は見えなかった。
「……」
ハルトは深呼吸した。雨の空気が肺を満たし、静かに吐き出す。
『思ったより感傷的にはなっていないようだね』
病室から、キュゥべえの声が聞こえてきた。
『人を救えずに、ファントムにしてしまったというのに。こういう時人間は、意味もなく嘆くんだろう?』
「……ああ。そうだな」
『君はしないのかい?』
ハルトは静かに病室を振り返る。バラアマゾン___恭介の遺体の上で、キュゥべえが、魔女が落としたらしき黒い小物を放り投げていた。背中に開いた口よりそれを摂取する光景は、とても不気味だった。
「俺は救える人は救うけど、手遅れだった人は諦める。都合のいいように聞こえるかもしれないけど、俺が泣いている間に、誰かが傷つくことだってある。さやかちゃんのことは、また探すけど、今は……」
『バーサーカーを止めるのかい?』
キュゥべえの問いに、ハルトは頷いた。
『ふうん。まあいいさ。君の言った通り、今日は副業に専念するとしようか。幸いここには、僕が見出したマスターが二人もいるからね』
「二人?」
『君と。バーサーカーのマスターさ』
「千翼くんのマスター……でも……」
クトリには、令呪はなかった。他の誰かが、千翼のマスターということだ。
ハルトは恭介に手を合わせ、すぐに病室を飛び出そうとした。ドアノブに手をかけたところで、足を止める。
「なあ。キュゥべえ。一つだけ聞かせてくれ」
『何だい?』
「さっきのあの怪物……魔女……だったっけ?」
『うん』
「お前の魔法少女の勧誘のために……お前が呼んだんじゃないの?」
『それは今、必要な情報かい?』
ハルトは首を動かさず、横目でキュウべえを睨む。無表情のキュゥべえは、澄ました無表情でじっとハルトを見返していた。
『急いだほうがいいのに。どうして君たちは、優先事項よりも、細かい些細な情報を気にするのか。全く訳が分からないよ』
「……肯定って受け取っていいのか?」
『君がそう望むのなら。ね』
ハルトは出ていくとき、力を込めてドアを閉めた。バンと音を立てたドアは、反動で少しだけ開く。
その間、キュゥべえはじっと、病室の入り口を見つめていた。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ