あたしってほんとバカ
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
返事がなかった。無表情のまま、彼女は恭介だったバラアマゾンを見つめる。
「恭介……恭介……恭介! 嘘……嘘だ嘘だ嘘だ!」
ウィザードとバラアマゾンの戦いに、魔女陣営も乱入してくる。無数の綿の怪物たちと、上空からヒットアンドアウェイを狙うバラの魔女。
「うわああああああああああああ!」
『フレイム スラッシュストライク』
さやかの悲鳴。ソードガンの詠唱。それらは全て、バラたちに塗り潰されていく。
周りの怪物たちを一気に焼き払い、ウィザードはさやかを守るように背にした。二種類のバラの怪人たちも、炎には弱いのか、一定の距離を持っている。
「大丈夫だから。だから、しっかりして」
「病院の水が原因なんだから……恭介が感染していないわけがなかったんだ……」
だが、さやかはウィザードの言葉を聞き入れていない。近くの綿たちを切り刻むバラアマゾンを見つめながら、ぶつぶつと言葉を繰り返している。
「さやかちゃん? ……うおっ!」
綿の怪物たちに押され、ウィザードはさやかから離れてしまう。さらに、バラアマゾンまでもがこちらに攻めてきた。
それぞれに対応しながらも、ウィザードの耳にはさやかの小声が響いていた。
「ようやく腕が治ったと思った……でも、それって、恭介が治ったんじゃなかったんだ……アマゾンになったからだったんだ……」
そして、次の言葉は、まるで無音のように、ウィザードの耳にはっきりと残った。
「そんな希望なんて……持っちゃいけなかったんだ」
バキ。
その音にぞっとして、ウィザードはさやかを振り向いた。
体制の変わらないさやか。だが、大きな変化が彼女に現れていた。
彼女の白い頬に、紫のヒビが走っていた。
「だめだ……ダメだダメだダメだ!」
ウィザードは急いで彼女のもとへ駆けつけようとする。だが、今度はバラアマゾンに勝負を挑まれる。その攻撃を防御しているときも、さやかに走るヒビはどんどん増していく。
「どいてくれ!」
だが、ウィザードの訴えにアマゾンは耳を貸さない。首のみを狙う彼に、ウィザードは防戦一方になる。
「そんなことにも気付かないで、バカみたいに来て……」
「さやかちゃん! しっかりして! ……邪魔だっ!」
『ビッグ プリーズ』
バラアマゾンを、ウィザードは巨大な手で白綿の怪物たちへ放る。
手のひらにバラの怪物のぬめぬめとした感覚を覚えながら、ウィザードはさやかへ急ぐ。
「さやかちゃん!」
手を伸ばすウィザードへ振り向いたさやかは、涙をながしながら___そして、ヒビはすでに、全身に行き渡っていた___静かに告げた。
「あたしって……ほんとバカ……」
その時。
美樹さやかという人間は
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ