第54話 友人
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な?」
携帯端末の画面に映るキャゼルヌは口ほどにも怒っていないように見えた。何しろ一コールで出てきてしかも制服なのだから、いくら背景がリビングでも帰宅したばかりというところだろう。後ろでオルタンスさんが調理している音も聞こえる。
「で、早速お願い事だな? 何だ、言ってみろ」
「戦闘艦艇五〇〇〇隻の半員数分補給と軽度補修可能な工作母艦を、四月一日までにジャムシード星域に調達していただきたいのですが?」
「そんな細かいご注文書を作ったのはカステルだな。奴の手に届く範囲は『あっち』に差し押さえられて首が回らない。そんなところだろう」
「おっしゃる通りです。後方勤務部やカステル中佐の前任の戦略輸送艦隊に頼むわけにもいかないので」
「お安い御用だ、とは言わないが、まぁそんなに難しい話じゃないな。送ってくれた業務用冷蔵庫分でチャラにしてやる。いつまでだ?」
「即答です」
「……訓練宙域がとんでもないところになったんだな。本来なら査閲部の責任だぞ、それは」
「査閲部も頑張って調整しているみたいですが『あっち』優先みたいです」
「よし、このまま奴と直接話をさせてくれ」
キャゼルヌはそう言うと画面の中で緩めたスカーフを締めなおして言った。
「しばらくカステルに冷たくされるかもしれんが、奴もそれは嫉妬と自覚しているだろうから許してやってくれ」
果たしてこの問題はあっさりと解決した。俺の端末画面を挟んで、キャゼルヌとカステル中佐は一瞬睨みあったが、キャゼルヌの『注文は受けたので、この件は任せてほしい。消費物資の会計処理は先輩(カステルのことだ)に任せます』の言葉に『新婚家庭の夜にすまない。頼んだ』の返事で終わったのだ。そして通話が終わった後、画面を切って端末を俺の胸に押し付けて言った。
「アイツと知り合いだっていうなら先に言え。まったく。取り越し苦労をさせやがって」
そういうカステルの顔も言葉ほどに怒っているようにも見えなかった。
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