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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第54話 友人
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きたモンティージャ中佐は話を聞いて丸い目を糸のように細くしたし、カステル中佐はせっかくセットした髪を右手で?き毟った挙句、間違いなく聞こえる範囲にいるブライトウェル嬢も真っ青になるような下品な呪詛を吐いた。それでも彼らは呆然とすることなく口と手を動かしはじめる。取りあえず仕事である作戦立案が一段落した俺は、訓練計画の見直しとともに一番忙しくなったカステル中佐の手伝いもする。キャゼルヌが『手際がいい』と評した通り、間違いなくこの日の司令部の主役はカステル中佐だった。
 移動する手間を惜しみ、爺様の名前で独立艦隊の補給参謀達を各個に呼び出して状況を伝え、監禁するかのように第四四高速機動集団司令部に押し留めると、そこから各部隊へ連絡させつつ自分の仕事を手伝うチームを作り上げる。訓練宙域への補給物資の事前輸送や航路確認を関連各所と調整する。部隊所属の補給艦を最優先で進発させる手続きなど、流れるように仕事を進めていくが、二〇時を少し回った段階でカステル中佐の手が端末の前で文字通り止まった。

「ダメだ。ジャムシード星域での野戦築城用に手配できる補給艦と工作艦が一隻もない。俺の権限で依頼できる範囲は全部差し押さえられてる」
「他の星域の余剰艦を廻すことはできないんですか?」
「どこかのアホが再編成で手近の奴は掻き集めたらしい。これはイゼルローンの手前の何処かに大規模な前線基地を作るつもりだな」
 補給参謀達がカステル中佐を囲んでああでもないこうでもないと討議しているが、一向に結論が出ない。
「……補給艦と工作艦が不足しているんですか?」
「ボロディン少佐。これは補給参謀の仕事だ。口をはさむな」
 気の荒い独立艦隊の補給参謀の一人が俺を睨みつけたが、カステル中佐は意に介することなく俺に言った。
「最終補給用の給糧艦と貨物弾薬補給艦、それに艦艇の各ユニット交換可能な工作母艦。キベロンやハイネセンに戻れれば補給廠もドックもあるから本来不要なものなんだが……」
「必要隻数はどのくらいなんです?」
「戦闘艦艇五〇〇〇隻の半員数補給と軽度補修分だ。訓練で艦艇のどこにも傷が付かず故障もないっていうなら工作母艦は必要ないが、初めて集団行動する寄せ集めの機動集団なんだ。絶対故障は発生する。部隊随伴の工作艦だけでは処理しきれないし、シュパーラ星域管区の数少ないドックを使うわけにもいかない」
「そうですか……」
 だいたい主攻がイゼルローンならこっちの作戦日程を後ろに一週間ずらせれば何とかなるのにな、と他の補給参謀が呟くのをしり目に、俺は喧々諤々している司令部事務室から離れ、主が帰った従卒控室に入る。私物が一切ない原状そのままの控室の扉を閉めて、俺は携帯端末を引き出しドラ●もんを呼び出した。

「新婚家庭の夜に電話してきたんだ。それなりの覚悟はしているんだろう
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