第54話 友人
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訓練査閲したロフォーテン星域管区キベロン訓練宙域とは比べ物にならないほどハイネセンから遠い。補給・休養施設は訓練宙域というのだから恐らくあるのだろうが、ハイネセンとフェザーンを結ぶ中央航路との接続星域がランテマリオ星域で、さらに間にはマル・アデッタ星域を挟んでいる。記憶が確かなら航路距離でハイネセンから一七〇〇光年は離れているはずだ。訓練宙域に到着するのに一六日だから往復で三二日。エル・ファシル星系までは一五日の行程で状況開始が四月一五日であるとするならば、仮に今すぐ進発したとしても現地で訓練する時間はない。この程度のことを査閲部の訓練調整担当部署が知らないわけがないから、この通知書が言外に言っていることはただ一つだ。
「『いってこい』ですか」
「提出された訓練時間が長すぎるというのが、奴らの言い分じゃ。その代わり査閲担当官はジャムシードで分離、訓練の総合評価は現地簡易評価で代用すると言っておる」
「第四次イゼルローン攻略作戦の準備はそれほどまでに困難をきたしているのですか?」
「大男総身に知恵が何とやらだ」
複数の艦隊を動員するであろうイゼルローン攻略戦の事前準備に遅れが生じる可能性は高い。その為、大規模訓練を行うことが可能なキベロン訓練宙域が抑えられた。他の制式艦隊にも定期訓練がある以上、カッシナ、マスジット、パラス、ヴィットリアといった利便性のある程度きいた訓練宙域も予定が埋まっているのかもしれない。だからと言って訓練と実戦が一連の流れになるというのは、戦況によほど余裕がない場合に限られる。そう第七次イゼルローン攻略戦のような。
「野良訓練は……補給の手配が付かないのでしょうな」
参謀長の言う通り、指定宙域外での訓練には、訓練中事故の補償や補給・修理品の補充などの保証が付かない。まして民間航路近くで実弾演習などやって民間船舶を撃沈しようものなら、物理的に胸に穴が空く。マーロヴィアで特務戦隊を訓練できたのも、民間船どころか海賊船すら近寄らないド辺境で、しかもたった五隻だったからだ。第四四機動集団だけで二四五四隻、他の独立艦隊を含めると五〇〇〇隻近いの軍艦が砲撃演習を行ったら、機密云々どころではない。
「大至急カステル中佐に計画修正をお願いしませんと。ジャムシード星域内のいずれかの星域に補給艦と工作艦を手配して『野戦築城』する必要があります」
「私は他の独立艦隊に状況を説明し、第四四機動集団ともども順次進発するよう各所と調整しよう」
「泥縄じゃが、まぁこういうことは長い経験上珍しくもなかった。どこの誰でも不満があるようなら儂に直接言うよう、対応してくれ」
爺様の指示に、俺は敬礼してすぐさま司令官公室を飛び出すと、モンティージャ中佐とカステル中佐を司令部に呼び戻し、状況を伝えた。短距離選手のように滑り込んで
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