第54話 友人
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レゴリー叔父はそれを心配しているのだろうが……実のところ三歳年上に九無主義の色男がいるというのが、俺の不安要素だ。まぁ、あの男が相手にするのは大人の女であって女の子ではないんだろうが。
そんなことを思いつつある意味三姉妹で一番大人なイロナと三年分積もった家族の会話をしているうちに、無人タクシーはホテルの近くに停車する。そこには当然のように、俺の高級副官が待っていた。
「おう、ヴィク。遅かっ……妹さんまでご一緒とは聞いてないぞ」
「言ってないからな」
澄まして応えると、ウィッティは俺の肩に右腕を廻し、イロナに背を向けて呟くように言った。
「あのなぁ。こういう大切なことはだ、事前に親友には話しておくべきだろうが」
「イロナはウィッティの好みか?」
「実に好みだが、そういうことじゃない。普通、年頃の親友の妹さんが来るとなれば、プレゼントの一つや二つは用意しておかなきゃいけないんだ。そういう事前の配慮ができないからお前、女の子にモテないんだぞ?」
「……それとこれとは関係ないだろう」
「関係あるんだよ」
「じゃあ、後で買い物に付き合え。アントニナとラリサの分は俺とお前で折半だ」
「まったく、頼りにならないアル中のお義兄様だn……」
言い終える前に俺はウィッティの脇腹に右拳を強く叩き込むと、そのまま肩を引き摺りながら会場へと引っ立てる。そのまま恐らくはオルタンスさんの友人であろう受付の若い女性に招待状を見せると、俺とウィッティとを品定めするような視線で見つめ……後ろに控えて咳払いをしたイロナの姿を見て一気に無表情になった。
ホテルの中庭を貸し切った会場内に入ると、やはりというか白い軍の礼服が多かった。その殆どはキャゼルヌの同期かその前後の年齢が中心だが、その中にも複数の高官が含まれており、オルタンスさんが高官の令嬢ではないことを残念がっている……まさに原作文章通りの光景だった。
その中でなるべく目立たないようにこっそりと端の方に立っている、黒い髪と黒い目、中肉中背の若い少佐の姿を、俺とウィッティとイロナは見つける。近寄ってくる俺らをまさに哨戒レーダーのごとく感知した若い少佐は、横に控えるこれまたよく見覚えのある鉄灰色の髪をした士官候補生と並んで俺に敬礼した。
「同じ少佐とはいえ、昇進したのはそっちが先なんだから、先に手を下ろせよヤン」
「そんなおっかないこと出来るわけないじゃないですか、ボロディン先輩」
「俺はまだ大尉なんだ。悪いな、ウェンリー」
「ウィッティ先輩も冗談が過ぎますよ。勘弁してください」
お互い苦笑しながらほぼ同時に手を下ろすと、ヤンが簡単にアッテンボローをウィッティに紹介し、お互い握手する。そして俺の背中に隠れようとしていたイロナを、俺はヤンとアッテンボローの前に引っ張り出した。
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