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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第53話 揺籠期は終わった
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てくる。だがその視線は言葉通りに酷評しているというよりは、なんでこんな計画を作ったのか説明を求めるものであるとはっきりとわかった。俺の左横に立つモンシャルマン参謀長は計画書に視線を落としたまま首を傾げているだけで何も言わない。爺様の左後ろに立つファイフェルは『僕は何も言いません』と直立不動で主張している。頼りにならない後輩を一瞥した後、俺は自分用に添削していた計画書を開いて爺様に応えた。

「結成されたばかりの部隊ですので、まずはどれだけ動けるか、各部隊の指揮官がどれだけ部下を掌握しているかを確認する上で、このレベルが一番良いと考えました」
「しかしマーロヴィアの特務戦隊であれば、ウィスキーを呑みながらでもできそうなレベルじゃぞ?」
「私見を申し上げてもよろしいでしょうか?」
「かまわん」
「どのような組織であれ、新たに結成するにあたり最も重要なものを小官は『相互確認』であると考えます」

 誰が上司で、誰が同僚で、誰が部下か。どのような考えを持ち、どの程度のことができるのか。組織として集団行動を行う際、特殊な例を除けばそれを知ることで、個々が自らの立ち位置をはっきりと理解することができる。
 おそらく俺が計画した訓練計画であれば、ほぼすべての艦が目標を達成することができるだろう。余程のつむじ曲がりでない限り、自らの立ち位置の確認と成功体験は人間の心に安定をもたらす。その積み重ねがより高度な目標を達成する糧になる。

 原作における同盟末期、ザーニアル、マリネッティと言った中堅指揮官が率いていた分艦隊が暴走したのも、指揮官の優劣以前に普段から意思疎通の全くない警備艦隊や巡察艦隊を掻き集めた上、まともな訓練をせずに戦場へ放り込んだからに他ならない。
 原作云々抜きにして大体そんなことを爺様に話すと、爺様は首を傾げ『どうしたものかな』とモンシャルマン参謀長に視線を送ると、参謀長は軽く咳払いをしてから俺に言った。

「君が上官の用兵術を解釈して訓練計画を立てたのは理解するが、逆にこの程度のレベルであると馬鹿にされたと各指揮官たちが不満を持つのではないか?」
「はい。参謀長のご懸念通りであると、小官も考えます」
「敢えてそこに踏み込むというのだね?」
「査閲部に一年ほど居りましたが、どれほど公平に評価したつもりでも、不満を持たない指揮官は一人としておりませんでした。このドリルにした目的は大きく分けて二つ。一つは『成功体験を獲得すること』もう一つは『艦隊火力統制の基礎を徹底的に身に染み込ませること』です」
「……まるで小学校教師の言うセリフだな」
「申し訳ありません。実際に初等教育要綱を参考にいたしました」
「ジュニアの究極の目的は『基礎機動運用時間の短縮』じゃな?」
「はい」

 爺様は一言で簡潔に纏めてくれた。イゼルロ
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