第一章
[2]次話
瞳の中の想い
ジェライント=フォーグナー博士は一体のアンドロイドを作成した、そのうえで助手の星智哉に話した。
「このアンドロイドには感情を入れてみた」
「あえてですね」
「アンドロイドもだ」
つまりロボットでもというのだ。
「感情、人間の心があればだ」
「人間になりますか」
「そうだ」
その皺が目立つ彫の深い顔で言った、ボサボサの髪の毛は全て白くなっていて眼の色はグレーである。背は一七六程で均整の取れた身体を白衣とスーツで覆っている。
「私は以前から言っているな」
「どんな姿形でもですね」
星も述べた、収まりの悪い黒髪に大きな黒い瞳を持っている青年だ、背は一六〇位でやはり白衣とスーツといった姿である。
「心が人間なら」
「人間になるのだ」
「博士の持論ですね」
「そうだ、だからだ」
「アンドロイドもですね」
「感情、人間の心があればな」
それならというのだ。
「人間になる、そのことをだ」
「この度造ったアンドロイドで、ですね」
「証明してみたい」
「そうですか」
「サイコ殺人鬼は人間か」
博士は星に真剣な顔で問うた。
「一体」
「心が化けものならですね」
「それは人間か」
こう言うのだった。
「果たして」
「もう化けものじゃないか」
「エリザベート=バートリーは人間か」
ハンガリーにいた血塗れの伯爵夫人はというのだ。
「少女を殺しその血で満たした湯舟に浸って美貌を望んだ彼女は」
「普通はです」
星は強張った顔で博士に答えた。
「そうした人間は」
「人間とはだな」
「言わないです」
「言えたものではないな」
「とても」
「そういうことだ、人間はな」
この存在はというのだ。
「心でだ」
「人間になるもので」
「アンドロイドもだ」
「だからですか」
「そのことを証明する、ではいいな」
「はい、それでは」
「これからだ」
まさにというのだ。
「アンドロイドを完成させよう」
「名前は何にしますか」
「アジア系の外見を考えているからな」
それでというのだ。
「そちらの名前にするか」
「アジア系ですか」
「そうだ、名前は」
それはというと。
「ミドリ=フォークナーにするか」
「その姓は」
「私が造ったからな」
「博士のですか」
「娘だ」
そうなるというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「私の娘としてな」
実際にというのだ。
「育てていく、そしてだ」
「感情もですね」
「育てていこう、アンドロイドもな」
博士はまたこう星に言った。
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