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針女
第二章

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「だから海の方の道で奇麗なおなごを見てもだ」
「その髪の毛を先を見るんだな」
「そうすればいいんだな」
「そうなんだな」
「ああ、そうしろ」
 こう若い者達に話した、そしてだった。
 長老は漁のこと以外に海のことそして化けもののことを若い者達に何かあると話していった、そしてある日。
 村でも一番と言われる男前の若い漁師太兵衛が漁が終わってだった。
 次の日は漁がないので仲間達とずっと飲んでいて夕方に家に帰ろうとする時に。
 海の傍の道に驚くまでに美しい女がいた、顔も髪の毛も奇麗で太兵衛がその女を見るとすぐにであった。
 彼に顔を向けて笑いかけてきた、その笑みに太兵衛は心を奪われかけたが。
 咄嗟に長老が言った言葉を思い出した、それでだった。
 その髪の毛の先をじっと見た、するとだった。
 光るものがあった、さらによく見るとそれは全て釣針だった。その釣針でわかった。
「針女か!」 
 太兵衛は踵を返して急いで家まで駆けだした、もう酔いはすっかり醒めていた。
 それで家に帰るとすぐに家の大戸を閉めて親兄弟に言った。
「針女が出た!」
「何っ、針女が!?」
「針女が出たってのかい」
「海の傍の道にいたんだ!」
 大戸を閉めて家の中に逃げ込んでから叫んだ。
「間違いない!」
「それは大変だ」
「大戸だけじゃなく窓も閉めるよ」
「ああ、全部閉めて」
 そうしてというのだ。
「今晩は出るな」
「朝までね」
「そうするぞ」 
 家族全員で言ってだった、そうして。
 太兵衛は親兄弟と共に家の中で閉じ籠った、音も立てない様にして飯を食った後は布団の中に頭から入ってだった。
 がたがたと震えながら朝を待った、物音は布団を被っていたので聞こえなかった。
 太兵衛も家族も朝まで寝られなかった、それで何とかだ。
 窓の隙間から明るい光が差し込んできたのを見て父親が言った。
「朝になったぞ」
「朝か」
「ああ、だからな」 
 それでというのだ。
「もう大丈夫だろう」
「そうか、じゃあな」
 太兵衛は父の言葉を受けて布団から出た、そうして。
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