第三章
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「拙僧は思います、命を無駄にしなければ」
「それでいいか」
「はい、その様に」
「では言いたいことを言えず溜め込むのは」
「思い残されることないのなら」
それならというのだ。
「言ってしまえばいいです」
「それで死んでも」
「それで死ねば運命かと」
こう言うのだった。
「思います」
「そうしたものか」
「ですから」
「言ってもか」
「いいかと」
こう話した。
「思い残ることがないなら」
「それなら」
「言われて下さい」
「それなら」
太助は住職の言葉に頷いた、そうしてだった。
村の樵仲間が集まってそうして酒を飲んでいる時に滝の話をした、すると仲間達は皆眉を顰めさせて彼に言った。
「おい、いいのかい?」
「あの滝の話をして」
「しかもその滝の女郎蜘蛛の話じゃないか」
「あの化けものの話はしたら駄目だろ」
「絶対に祟りがあるだろ」
「しかも今の話だとな」
太助が話したそれによると、というのだ。
「あんた喋るなって言われてるじゃないか」
「実際に」
「それでそう言うか?」
「まずいだろ」
「絶対に祟りがあるだろ」
「どうなっても知らないぞ」
「祟りがあってもな」
それでもとだ、太助は仲間達に笑って話した。話しつつ酒を美味しそうに飲む。
「もう孫の顔も見たしな」
「思い残ることはない」
「それでか」
「もうか」
「死んでもいいか」
「別に」
「ああ、何があってもいいさ」
こう言ってだ、太助は満足している顔でまた酒を飲んだ。そうしてだった。
この日彼は心ゆくまで酒を飲んだ、そのまま酔い潰れたが。
夢であの女に会った、女は彼にむっとした顔で言った。
「言いましたが」
「あんたのことを話したらだな」
「命はないと」
太助にこのことを言うのだった。
「確かに」
「ああ、しかしな」
「言われましたね」
「それがどうしてかっていうんだな」
「命はないというのに」
「もう死んでもいいからだよ」
太助は女に笑って話した。
「だからだよ」
「人に話したのですか」
「そうさ、だから今すぐにでもな」
「命を奪ってもいいですか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
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