第二章
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「学校の勉強と同じで苦労したけれど」
「そうか、免許も取ってか」
「将来は日本一のラーメン屋だぜ」
「っていうと店長さんにもか」
「ああ、店長さんも目指してるけれどな」
「日本一のか」
「ラーメン職人になるぜ」
こう言うのだった。
「だから俺の店にも時々来てくれよ」
「わかった」
兄は弟に微笑んで答えた、だが。
ここでだ、鉄男は。
乗介の腹を見て弟にあらためて言った。
「ただお前な」
「?どうしたんだよ」
「腹出て来てないか?」
「そうか?」
「何かな、まだ二十二だろ」
「いや、ずっと店に立って頑張ってラーメン作ってるからな」
「運動してるか?」
「だから大丈夫だよ、それに多少太ってた方が貫録出ていいだろ」
笑って返す弟だった、だが。
鉄男が就職してから暫くして道子という大学の同級生でサークルで知り合った眼鏡がよく似合う黒髪を長く伸ばした明るい顔立ちと表情の彼女と結婚して子供が出来た頃乗介も結婚していたがその彼に。
鉄男は妻を連れて彼がいる店に来て彼が作ったラーメンを食べながらカウンターの中にいる彼に言った。
「お前のラーメンかなり美味いな」
「だろ?いつも作ってあちこちの店も食べ歩いてな」
「研究してるんだな」
「そうだよ、努力してるんだよ」
こう兄に言った。
「俺も結婚したしさ、家族を食わせる為にもな」
「お客さんが来てくれるラーメンをか」
「作らないと駄目だしな」
生きる為にもというのだ。
「だからな」
「そうか、頑張ってるな」
「だろ?本当に世界一のな」
「ラーメン職人になるんだな」
「ああ、そうなるな」
「その努力はわかった、けれどな」
その弟をカウンターの席から見ながらだ、鉄男は言った。隣には妻がいてやはりラーメンを食べている。
「お前本当に太ったな」
「そうか?」
見れば高校の時より倍は太っていた。
「そんなにか?」
「ああ、ひょっとして食べ歩きのせいか?」
ラーメンのそれだというのだ。
「それか?」
「貫禄出て来たか?」
「いや、普通に太ってるだろ」
こう弟に返した。
「今のお前は」
「ある程度体格ないと肉体労働だしな」
「だからか」
「身体もたないしな、鏡花ちゃんのご飯美味いしな」
結婚した妻のことも言った。
「だからな」
「そうか?けれど太り過ぎはな」
「大丈夫だって、兄貴心配し過ぎだろ」
「そうだといいけれどな」
二十代後半でもう体重は百キロありそうな弟を見て言った、だが。
店を出ると彼は妻にこう言われた。
「成人病になってないとね」
「いいか?」
「そうじゃない?」
「けれどあいつ昔はすらっとしてたからな」
高校時代までの彼のことを言った。
「だからな」
「それでなの」
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