囀り石
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しーい。
「はいっ小梅、5さいです!!…あっ…」
スピーカーに切り替えたのかと思われる程の怒声が受話器から洩れ聞こえる。ちびりそうな顔で震え上がる小梅。
「……いえ、ちがい…ます、小梅では、ありません…まちがいです…」
怒声がしっかり聞こえた。なに云ってんのー!今すぐそっち行くからねー、今度こそ動くんじゃないわよ!!…って聞こえる。あと半刻もしたら、カンッカンに茹で上がった状態の姉貴がドアを叩き割る勢いで現れるのだろう。…熱のせいだろうか、頭がくらくらする。
「あの…私…」
ママが来るまで居ます…そう云って静流は力なく微笑んだ。
熱と頭痛が冷めやらぬ頭で、ぼんやりと見上げた時計は。
―――3時を、指していた。
リビングに一人取り残された俺は、掌に包み込んだ石をぼんやり眺めていた。
『どうじょうは、いらん!!』
とちびりそうな顔で叫ぶ小梅の横に座り、静流は背中を軽く撫でた。
『私がいたら、ママは怒りにくいでしょ。だから、ママが怒るの忘れるまで一緒にいるよ』
そう云って微笑んだ。…そして言葉通り、小梅と姉貴と一緒に帰っていった。…天使か。まじ天使か。
で結局大量の見舞い品と共に置き去りにされた俺は一体何なのだとか、そういう些末なことはどうでもいいのだが、問題は静流が置いていった謎の石だ。
結局彼女が何を思って拾った石を見舞いに置いていったのかは全く謎なのだが、この際はそれも些末なことだ。
この石は『小梅が3時にくる』と呟き、俺に教えた。
災難…とまでは云わないが、少々都合の悪い未来を教えてくれた。何故そんなものがそこら辺に落ちているのか、そして何故静流がピンポイントで拾ってしまうのか、本当に謎なのだが、もう今の俺にはそれすら些末なことでしかない。
―――問題は、この石がどんな意図をもって俺のもとに流れ着いたのか、それに尽きる。
こういう事は奉に確認するのが一番確実なのだろうが、俺は桜が咲くまで出入り禁止の身の上だ。…まてよ、そもそも俺の元に持ち込む前に、どうして静流は奉に相談しなかったのだろうか。
未来視の静流が無警戒に持ち込んだということは、この石について『未来の危険』は感じていない…ということだろう。ならば出禁が解ける期間くらいは、前情報なしで手元に置いても害はない…
……けど厭だなぁ!なんかボソボソ喋る石とか置いていかれるの!!
仮に皆が寝静まった真夜中とかに急に喋り出したら、こいつの仕業と分かっていてもビクっとするわ。安眠が出来んわ。かといってこういうものをそこら辺に捨てたりしたら変に恨まれたり呪われたりしそうだしなぁ…。俺は急に思いついて、引き出しからマッキーをとりだし、簡単な目と口を書いてみた。これで喋ってもちょっと可愛く…
いや駄目だろこれ
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