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『外伝:赤』崩壊した世界で大剣豪とイチャコラしながら旅をする
難航-すれちがう-
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、実はそのどれもが心の中で思うだけで一切行動に移せていない。
俗に言う、私はヘタレだ。
さっき手を重ねたのもうっかりではなく、勇気を振り絞ってやってみたけどまるでダメだ。
数々の戦場、修羅場、ありとあらゆる猛者と戦い抜いてきた私だけど"そっち方面"となるとまるでダメだ。
そういった感情は剣を鈍らせる。なんて言うけど私を大切にしてくれたマスターを天秤にかけたならそっちに傾くのは仕方がない。
恋愛…。
何もかも分からない。私にとっては未知の領域。
私はそこに踏み出せずにいるし、そうしている間にも大和くんがどんどん遠ざかる気もしている。
何か無いだろうか…こう、グッと距離を近づけられるような事は…。

いや、ダメだ。
機会を待ったって何にもならない。
ここは自分から積極的にいかなきゃいけない…!

というわけで

「大和くん!」
「え?」

場面を戻し、仕事を終えてヒビだらけのアスファルトを歩く二人。
ここで私は現状を打破すべく思い切って話した。

「てを…」
「…テオ?」
「手を…そう!手を繋ぎましょう!!」
「…?」

不思議そうに首を傾げる彼。
最初は握手するのにも戸惑っていたのに、彼はなんの問題もなしにその手を私に伸ばしたのだった。
まさか…ずっと一緒にいたからそういった恥ずかしさとか薄れてる…?

「え、えーと…。」
「どうしたの?」
「あ、ああいえ!繋ぎましょっか!」

差し出された手を掴む。
彼の腕の感触、温かさが伝わる。
最初に会った時とはまるで違うものだった。
鍛えられ、何度も刀を振っていた大和くんの手…。
あちこちにマメは出来てるし、ボロボロで、必死の思いで強くなろうとしていたことは嫌でもわかる。

「…。」
「…どうかした?」
「う、ううん!なんでもない!なんでもないの!」

平静を装いつつも、歩く。
彼の歩幅は大きくて、少し歩みを早めないと置いていかれそうになる。
こうやって手を繋ぐと実感する。
ああ、大和くんは…今変わろうと必死なんだなと。

「…?」

大和くんは終始不思議そうな顔をしていた。
無理もないだろう。いきなり手を繋ぎましょうって言ったかと思えば本人があたふたしたり戸惑ったりしてるんだから。

「手、痛くない?」

そんなボロボロの手なのに、よくここまでやってこれたなと思う。

「大丈夫。」

それだけ言って、大和くんは前を向く。
次の言葉が出てこない。
話題を出して、二人で話して、自然と手を繋ぐ感じで行こうと思ったけど共通の話題が全然ない。
あるとすれば稽古の話だし。
つまり、何も言わない無言のまま二人で手を繋ぎ、真っ直ぐどこかへと歩いていく。

ただこうしていると、心のどこかでほっと安心する
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