第三章
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再び車を思いきり飛ばしてふわりの元飼い主の家に行った、そして玄関のチャイムを鳴らして若い夫婦を呼んでだった。玄関に出て来た二人を睨みつけて言った。
「ふわりは今保健所からうちが引き取ったからな」
「ああ、そうですか」
夫が素っ気なく答えた。
「じゃあ飼って下さい」
「うちはもういいですから」
妻も言ってきた。
「好きにして下さい」
「ふわりはお前等の娘さんだったんだよな」
文太は素っ気ない二人を睨んだまま彼等に問うた。
「そうだったな」
「娘じゃないです」
「ただの飼い犬ですよ」
「もういつも吠える様になって五月蠅くて」
「いらなくなったから捨てたんですよ」
「そうか、それでか」
ここでだ、文太は。
自分の足下に大きなビニール袋に入れられて粗大ゴミのシールまで貼られたかつて彼等がふわりに着せていた服や与えていたおもちゃそれにご飯やお水を入れる皿にトイレを見てだった。二人にあらためて言った。
「服とかも捨てるか」
「五月蠅いったらありゃしないんですよ」
妻が忌々し気に言ってきた。
「一日中吠えて」
「犬は吠えるんだよ、ましてやトイプードルはな」
これが文太の反論だった。
「しかも一日中ケージに入れて散歩もしないで全く振り向かないで相手にしなかったらお前等だってそうなるだろ」
「餌はあげてトイレは処理していましたよ」
夫が言い返してきた。
「一日一回ちゃんと」
「一回か、ふざけてるのか」
朝昼晩三回やるものだというのだ。
「それがお前等か、それでもうふわりはいらないか」
「たかが犬でしょ」
また妻が言ってきた。
「そこまで言うことないでしょ」
「たかがか、お前等でも保健所に送られたらどうなるかわかってるな」
「死ななかったですよね」
夫もまた言った。
「じゃあよかったですよね」
「それは死んでもよかったってことか」
「人じゃないですからいいじゃないですか」
「そうか、お前等は命をそう考えているんだな」
文太は額に青筋を立てて言った。
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