第二章
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「うちはまだいいです、この子達は若し期限が来ても」
「預かれるですね」
「ボランティアの団体が多いので」
「引き取ってくれてですか」
「ちゃんと飼い主を探してくれるので」
「そうですか」
「はい、ですが多くの保健所は」
文太に沈痛な顔のまま話した。
「おわかりですね」
「殺処分ですね」
「そうです、ふわりちゃんは幸いうちに来て」
そしてというのだ。
「万が一でもでしたし今貴方達が来てくれたので」
「だからですか」
「運がよかったです、ですが元の飼い主の人達は」
「ボランティアの人達や俺達のことは」
「知ろうともしないで」
それでというのだ。
「もういらないでした」
「いらないですか」
「はい、性格が変わって朝から晩まで泣いて家族が困ると言って」
そうしてというのだ。
「うちに捨てに来ました」
「そうですか」
「最初の日はずっと鳴いてました」
ふわりはというのだ。
「飼い主を呼んで、他の犬や猫もそうですが」
「捨てられたと思わないで、ですね」
「そうです。飼い主は気楽なものですが」
捨てる方はというのだ。
「捨てられる方はたまったものじゃないです」
「そうですね」
「ええ、ですが」
それでもとだ、保健所の人は文太に話した。
「よかったです」
「俺達が引き取るからですか」
「今度こそふわりちゃんを幸せにして下さい」
保健所の人は文太に顔を向けて言った。
「是非」
「絶対にそうします」
これが文太の返事だった。
「俺も」
「お願いします」
こう言ってだった。
そしてだ、そのうえで。
文太達は重い扉を幾つも越えて悲しい顔をして蹲ったり泣いている猫達を見ながら寒い場所を歩いていった。そして。
一つの檻の前に来た、そこでは。
ダークブラウンのトイプードル、タイニータイプでドワーフ型の娘がいた。文太はその犬を見て保健所の人に言った。見ればふわりは極めて悲しそうな顔で死んだ様に横たわっている。
「ふわりですね」
「はい、では」
「今から引き取ります」
こう答えてだった。
文太は保健所の人が開けてくれた檻に入ってふわりを抱き抱えてそうして妻に言った。
「帰る前にあいつ等の家に行くぞ」
「どうして?」
「ちょっとな」
こう言ってだった。
彼は寝ているふわりを抱いたまま保健所の人に挨拶をして保健所を後にした、そして妻にふわりを預けてだった。
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