並行世界のクリスマス2020
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から……」
「響……ごめん」
やってしまった、と肩を落とす未来。
俯いた響の表情から、全員がそれを察していた。
2年前、ライブ会場の惨劇。
周囲からは謂れのない迫害を受け、家族がバラバラになり、陽だまりである未来も引っ越してしまった響には、祝日や誕生日への関心さえ薄れるほどの辛かった時期。
響の辛い記憶を呼び覚ましてしまったと、未来は後悔した。
──だが、今の彼女には彼がいる。
「響さん」
「翔……?」
翔は響の手を包むように握ると、顔を上げた彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「大丈夫。響さんはもう、一人じゃないよ?」
「……あ……」
翔につられて周りを見回す響。
「立花」
そこには、将来的には義姉になる、頼りになる先輩がいて。
「響ちゃん」
「立花」
可愛い先輩と、その恋人である翔の親友がいて。
「響」
戻って来てくれた陽だまりがいて。
「ほらね?」
そして、優しく抱き締めてくれる、木陰のような彼がいる。
2年前までとは違う。
今の彼女にはこんなにも、手を繋いでくれる人達がいるのだ。
「みんな……」
目頭が熱い。溢れてきそうになるそれを、見られたくないとは思わなかった。
そっと、右肩に手が置かれる。
わたしはそれに答えるように、彼の腰へと手を回した。
「ほら、料理冷めちゃうよ?」
「そうだよ。早く食べて、ケーキ切ろう?ね?」
「楽しい時間は、まだまだ、これから」
「プレゼント交換とかあるし、トランプも用意してるぜ!」
「涙はこのハンカチで拭きなさい。折角のクリスマスに、涙は合わないわよ?」
「うん……みんな……ありがと……」
皆優しくて、あったかい。
今、わたし……すごく幸せだ……。
どうしよう……瞼の裏から溢れ出してる気持ちが、止まってくれそうにない……。
……今なら、素直に言える気がする。
「翔……」
「なんだい、響さん?」
いつもは恥ずかしくて、中々言葉には出来ないけれど……。
伝えられる時に伝えないと、勿体ないよね。
「……大好き」
「……ぼっ、僕も……大好き……だよ……」
翔の顔が、耳まで真っ赤になる。
ホント、不意打ちには弱いよね……可愛い。
今夜くらいは、最初っから素直に甘えてもいいかも……。
「未来も、ありがとう。また、未来とクリスマスを祝えて嬉しい」
「響……」
また来年も、そのまた次の年も……翔と、未来と、皆と一緒に過ごしたいな……。
……さて。いつまでも暗い気持ちじゃ、クリスマスを楽しめないもんね。
ここからはリフレッシュして、皆でワイワイやろう。
「クリス先輩、仕切り直してよ」
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