悲劇の原因
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
悪魔と否定したい、友奈の心を。
全ての拘束具を取り払ったアマゾンネオ。阿修羅のように、六本の腕を持つ、醜悪な怪物であるそれは、ゆっくりとこちらに歩いてきた。
「ねえ……あれって……」
ウィザードに、困惑の声が混じっていた。
彼もきっと、友奈と同じ気持ちだろう。
だが、友奈が答える前に、アマゾンネオ___と仮定する___は、吠えた。
その体表を突き破り、無数の触手が放たれた。
それは容赦なく友奈、ウィザード、龍騎を絡め、締め上げた。
「きゃああああ!」
「うわっ!」
「放せっ!」
三人とももがくが、アマゾンネオの拘束は強く、びくともしない。
その時。
アマゾンネオの足元。
見逃してしまいそうなものを、友奈は見た。
触手が出るときに、飛び散ったアマゾンネオの体液。それが、近くを逃げ回っていたネズミに付着したのだ。
「……!」
その一部始終を、友奈は見た。
起 ネズミは、付着した体液に驚く。
承 やがて体液は、ネズミの全身に染み渡る。
転 もう嫌になるほど見た、白い蒸気がネズミより発生。
結 そうして、ネズミは、さきほど友奈が戦ったウミヘビのアマゾンになる。
「そんな……!」
生まれたばかりのアマゾンがアマゾンネオに踏み潰された。だが、それを見てしまった瞬間から、友奈はそのことにしか考えられなかった。
「友奈ちゃん!」
「友奈ちゃん!」
ウィザードと龍騎の呼びかけにも、友奈は動かない。ただ、口をガタガタと震わせていた。
「千翼くんが……」
「友奈ちゃん!」
「どうしたんだよ!?」
「今、足元のネズミが……アマゾンになった……」
それを口にすると同時に、友奈は確信した____確信してしまった。
「千翼君が、感染源……溶原性細胞の、感染源……アマゾン化の、原因なんだよ!」
嘘だ、と、誰よりも友奈が訴えていた。
だが。
その音に、友奈の背筋が凍る。
この世界に来てから、もう聞くことはないと思っていた、スマホの警報音。
かつての世界で、バーテックスという敵が襲来してきたときの警報音。
「……」
友奈は、傍らの牛鬼を見ながら首を振る。
それはつまり、勇者システムは、アマゾンネオ___千翼を、バーテックスに匹敵する脅威だと認識したということ。
放っておいては……生かしてはいけないということだった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ