第三章
[8]前話
「そうだったんだ」
「ええ、静かにしているつもりだったけれど」
「聞こえていたよ」
「そうだったのね、これから気をつけるわ」
「けれど何で平安時代の車がここで妖怪になっているのかしら」
彩香はこのことを不思議に思った。
「京都じゃなくて」
「四天王寺とかがあってここに公家の人達も来ていたんだろ」
兄が妹のその疑問に答えた。
「だからな」
「牛車の妖怪がいるのね」
「そうよ、私のご主人は結構四天王寺にお参りしていてね」
朧車も答えた。
「私をずっとここに置いて使ってくれていたのよ」
「それで大阪にいるの」
「そうなの、代々それも百年以上使ってくれたから」
「百年以上なの」
「長く使ってくれたから私も魂が宿って」
それでとだ、妖怪は彩香に話した。
「妖怪になったのよ」
「そういうことだったの」
「ええ、これでわかったわね」
「ええ、あんたがここにいる理由がね」
「そういうことよ、じゃあこれからは出来るだけ姿も音も気配も消す様にするから」
「私達からは見えないで聞こえない」
「そういう風になるわね」
「そうなのね」
「ええ、それじゃあね」
最後にこう言ってだった、朧車は姿を消した。そして音もだった。三人はそれを受けて朧車がそれまでいた場所の前から離れ。
そしてだ、映一郎は彩香と映二郎に言った。
「そういうことだったんだな」
「そうね、妖怪だったのね」
「何かって思ったら」
二人もこう答えた。
「牛車の妖怪で」
「それがここにいたのね」
「そうだな、じゃあそのことがわかったしな」
二人にあらためて言った。
「家に帰って寝るか」
「そうね、三人共もう晩ご飯食べたし」
「お風呂も入ったし」
「それじゃあね」
「もう家に帰って」
「自習するなり寝るなりしような」
こう話してだった。
三人で家に帰ってそれぞれ勉強なりしながら寝た、そしてこの話は終わった。三人共音の正体がわかってほっとしてそれぞれのベッドの中に入って寝て。
大阪の朧車 完
2020・12・27
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