第一章
[2]次話
大阪の朧車
中村彩香は大きな黒目がちの目を持っている、肌は雪の様な餅肌で眉は細く泣きそうな感じになっている。黒髪は長く伸ばし左右で縛って垂らしている。小柄で背は一五三位であるが胸は九十近くある。だがウエストは引き締まっている。八条学園高等部普通科の二年生である。
その彼女が今弟の中学生自分と同じ学園の中東部に通っている映二郎に言われていた。
「俺塾の帰りで聞いたから」
「何かを曳く音を?」
「そう、大八車を曳くみたいな」
そうしたというのだ。
「音を聞いたから、あれ何かな」
「自動車じゃないわよね」
姉は弟の黒髪をスポーツ刈りにしていて長方形で自分と同じ目の弟の顔を見ながらそのうえで言った。
「別に」
「車の音じゃなかったよ」
弟もこう言った。
「本当にさ、それで場所は」
「何処なの?」
「うちの最寄りの駅の」
そこのというのだ。
「阿波座の」
「あそこのなの」
「そう、うちに向かう方に出たら」
その時にというのだ。
「聞こえたんだよ」
「そうだったのね」
「本当にね」
「大八車を曳くみたいな」
「もっと重い様な」
そうしたとだ、弟は姉に話した。
「そんな音だったんだよ」
「そうだったのね」
「けれどこの辺りにそんな車あるかな」
「大八車をもっと重くしたみたいな?」
「そんな車ある?」
映二郎は彩香に問うた。
「一体」
「大八車ならあるでしょ」
彩香は弟に腕を組んで考える顔になって答えた。
「リアカーはね」
「それはあるんだ」
「ええ、ただもっと重い音ね」
「もっと。十倍位重い様な」
そうしたというのだ。
「そんな音だったよ」
「何かしら、その車」
「それがわからないね」
「ええ、何の音かしらね」
「興味があるね」
「うん、何かな」
こう言ってだ、そのうえでだった。
二人は実際に夜にその場所に行ってその目で確かめようという話をした。だがここで二人の兄で八条大学の空手部で三段になっていて剣道も初段である映一郎が言ってきた。外見は映二郎が一八〇以上の背になって逞しくなった感じだ。
「俺も行くな」
「お兄ちゃんもなの」
「ああ、どんな音か興味が出たからな」
彩香に笑顔で言った。
「だからな」
「一緒になの」
「ああ、行ってな」
そしてというのだ。
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