さっきまで人間だったもの
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
誰か! 誰かいないのか!?」
生き残りを求めるハルトの声は、ただむなしく病院内を響くだけだった。
やがて、二階フロアに着いた時、すぐ近くのドアが開く。
「生き残り!」
その姿に、ハルトは歓喜の表情を浮かべた。
可奈美と同じくらいの年齢の少女。全身傷だらけだが、ドアノブに体を寄りかけながらその姿を見せた。
「君! 大丈夫?」
ようやく見つけた生き残りの少女を助け起こしながら、ハルトは尋ねる。
全身血まみれの少女は、ハルトを見上げて呟く。
「に……げ……て……」
その時、ハルトは絶句した。
見上げた彼女の首筋に、黒い血管が浮き出ていることに。
彼女から発せられた蒸気により、全身が焼けるような熱さに襲われる。
悲鳴も上げる間もなく、少女の姿は、黒い、アマゾンへ変わった。
「!?」
急いでアマゾンから離れようとするが、変身解除したのがまずかった。少女だったアマゾンはハルトの腰を掴み、指輪のホルスターがその爪にかかる。
結果、ホルスターがそこにはめられていた指輪が散乱し、階段から一階へ落ちていく。。
「しまっ……」
アマゾンの前で、拾いに戻るなどという隙の大きいことなどできない。ハルトはアマゾンの腕をドロップキックで相殺し、近くの病室へ逃げ込もうとした。
だが。
「ここも……っ!」
病室には、ぐちゃぐちゃと折り重なった中年の男女を食べる、子供のような大きさのアマゾン。サイの頭部をしたそれが食べているのは、まさか両親では、とハルトの背筋が凍る。
その子供のアマゾンは、ハルトの入室に気付き、次の獲物に狙いを定めた。
「またかよ!」
ハルトは急いで廊下に飛び出し、新手のアマゾンから逃れる。
「くそ、まだ生き残りがいるはず……!」
二体のアマゾンへ近くの観葉植物を投げつけ、距離を稼ぐ。走る先に見つけた、もう一つの階段。
そして、向かいの病室の扉が開く。
騒ぎに怯えた病人_____だった、アマゾン。
「嘘でしょ!」
大人らしい身長のクワガタの姿をしたアマゾン。それはハルトを見定めると、その首を掴みかかってきた。
「グッ……!」
対応できなかったハルトは、そのまま廊下に押し付けられる。一度引き込まれ、再び壁に。アマゾンの人智を越えた腕力に、壁は砕かれ、ハルトは二階からロビーへ投げ出された。
指輪がなければ、ウィザードといえどもただの人間。生身のハルトは背中から落下した。
「あっ……」
ウィザードリングとの距離が縮まったのに、痛みでより遠く感じる。
飛び降りてきた三体のアマゾンに加え、病室や陰などに隠れていたアマゾンたちもその姿を現す。
「こんなことって……」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ